研究課題/領域番号 |
15H05386
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
南出 和余 桃山学院大学, 国際教養学部, 准教授 (80456780)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人類学 / 若者 / バングラデシュ / 生活戦略 / 都市移動 / 教育経験 |
研究実績の概要 |
本研究は、1990年代以降学校教育が全国規模で普及したなかで教育経験を積んだ若者たちが、近年のバングラデシュの著しい経済成長のもとで、都市農村間移動や社会階層移動を通じていかなる生活戦略を模索しているかを明らかにすることを目的としている。 2年目の平成28年度は主に、初年度に設定した調査対象に関する現地調査を実施し、データの収集分析を終えた部分を随時、国内外の学会や研究会で発表した。具体的には、まず、初年度に実施した調査分析をもとに、平成28年5月にクロアチアで開催された国際人類学民族学研究連合大会において「南アジアの教育経験とジェンダー」の分科会をもち、そのなかで「高学歴化する中間層女子大生のブルカ戦略」と題した口頭発表を行った。同分科会にはバングラデシュから現地研究協力者の一人であるAinoon Naher氏(ジャハンギルノゴル大学人類学部教授)を招へいして「都市に住む若年女性たちの『ハラカ』実践」について発表していただいた。 次に、8月後半から9月上旬にかけて現地バングラデシュに渡航したが、7月にダッカで起きた襲撃事件を受けて外務省から「テロに対する特別警戒」が発令されているため、当初予定していた農村部での調査は自粛し、受入機関であるジャハンギルノゴル大学で開催されたセミナーへの参加や、現地研究協力者らとの研究会の開催などによる議論構築、また安全確保が比較的やりやすいダッカ近郊での若者への聞き取り調査などを実施した。平成29年2月に再度現地を訪れた際には現地警察等による警備体制が整いつつあったことから、現地警察等の保護を得たうえで数日間の農村部と都市での調査を実施した。その際にも現地NGOや研究協力者等に終始同行をお願いして実施した。とくに、農村部から都市近郊に出稼ぎにきて核家族生活を築いている若者たちへのインタビュー調査については一定の成果が出ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記したとおり、平成28年度は、7月に起きたダッカ襲撃事件の影響によって、現地調査のうち特に農村部での調査が当初予定していたほどには十分に実施できなかったが、研究代表者自身による調査が難しい部分を補うために、現地研究協力者に実施を依頼できる質問紙調査を企画し、質問紙を作成した。最終年度にこれを実施する予定である。 また、研究の成果については国内外の学会や研究会で随時発表しており、最終年度にはこれらをもとに、より体系的な分析議論を進める。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は本研究の最終年度ではあるが、2年目に十分に実施できなかった現地調査(質問紙調査を含む)を実施するために、8月にバングラデシュに渡航する予定である。引き続き9月前半も現地に滞在し、現地研究協力者との議論を重ねる。 2年目と今年8月までに得られたデータをもとに、10月に米国ウィスコンシン州で開催される南アジア学会において「現代バングラデシュの若者の生活戦略」と題する分科会を開き、研究協力者4名と研究代表者が各自研究発表を行う予定である。さらに、平成30年1月にバングラデシュダッカにて開催予定の国際ベンガル学会でも個人研究発表を行う予定である。これらの成果は国内外の学術雑誌に投稿するべく準備を進めている。 また、本研究を基課題研究として、平成30年度から31年度にかけて国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)の採択が内定しており、「現代バングラデシュの若者のアイデンティティポリティクスからみる社会変動」として発展させる予定である。
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