研究実績の概要 |
本年は、金融市場として資産市場に焦点をあて,金融政策の効果に関する研究を行った。とくに住宅市場を考え、金融政策が住宅価格変動を考慮して行った場合にどのような影響がマクロ経済にあるかを分析した。まず、住宅価格のあるマクロ経済モデルの開発を行い、開発したモデルをもとに金融政策の効果を理論的に考察した。その結果、住宅価格変動を考慮した金融政策は、均衡の決定性(Equilibrium determinacy)に貢献し、マクロ経済の安定化をもたらす可能性があることが分かった。過去の研究では株価変動を考慮した金融政策は均衡の非決定性(Equilibrium indeterminacy)を引き起こし、マクロ経済の不安定化要因となることが知られているが、今回の研究では、株式とは異なる資産である「住宅」の場合は、金融政策の効果が大きく変わることを発見したことが理論的貢献点である。2007年後半からの金融危機以降、住宅価格の変動は注目を浴びているもののひとつであり、この研究結果は経済政策に一定の示唆をもたらすものと考えられる。以上の結果は、"Asset Prices, Nominal Rigidities, and Monetary Policy: Case of Housing Price"および「住宅価格変動を考慮した金融政策運営とマクロ経済の安定性」という2本の論文にまとめた。前者はCIGS Working Paperとして公表し、後者は専修経済学論集に受理・掲載された。 上記に加えて、都内近郊の若手マクロ経済学研究者を集めたDSGE workshopを7回開催したほか、愛媛大学城北キャンパスにてDSGEコンファランスを開催した。
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