研究課題
当初設定された本研究の目的は,思想の大衆化の過程,つまり思想家の言説が人びとに普及し受容される際の歴史的経過の解明にあった。 なかでも,1.人物,2.組 織,3.地域という三つの観点を一年ごとに順番にこの問題を考察することを企画した。そもそも本計画は計四年間であるが,三年目にあたる本年度は,そのなかで「地域」という概念に着目し,新自由主義的 な経済政策を採ったチ リのピノチェト政権の経済思想とハイエクとの関係を論じ,四年目における, 新自由主義の大衆化過程につい て総合的な考察の準備とすることを主眼において考察を深めた。実際には,1970年代に新自由主義的な経済政策によって実際に経済成長を遂げたチリのピノチェト政権の経済思想に焦点を当て,ハイエク思想との異同を抽出した。それは具体的には,他の自由主義者,例えばフリードマンとの比較において,より明確な論点が提出されることになった。このため,計画に掲げたように,ハイエクおよびフリードマンの手紙のやり取りなどが所蔵されているアーカイブスの調査を必要とすることが判明した。そして,そのために,スタンフォード大学フーバー研究所の文書群の調査を企画した。調査には現地の研究者の協力を仰ぎ,適宜アドバイスをいただく方がより有意義な調査になると思われたが,予定がどうしても合わなかったため,この文書の調査を行う海外出張を次年度に延期し,先にこれまでの調査の結果をまとめて,英語論文の執筆と投稿として成果の獲得を目指すことに計画を修正した。
3: やや遅れている
上記研究実績の概要に述べたように,この年度に企画していた研究調査ができなくなったことで,必要な調査が延期となった。そのため,計画の遂行全体から見ると,「やや遅れている」と判断した。
研究計画の遅れは,海外出張を行い,現地の研究者とスケジュールを調整したうえで当該文書群の調査を行うことで追いつくことができると考えられる。そのため次年度にその調査を設定し,その結果を活用して研究成果の獲得を目指す。同時に,海外のアーカイブスの調査に出かけなくても入手可能なドキュメントについては,コピーや郵送などの方法が可能かどうかを当該大学にあらかじめ問い合わせて,入手を済ませておくようにするなどして,よりスムーズな資料収集に努めたいと考える。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 備考 (2件)
Hayek: A Collaborative Biography Part X: Eugenics, Cultural Evolution, and The Fatal Conceit
巻: vol.X ページ: 419-433
https://doi.org/10.1007/978-3-319-61714-5_11
https://researchmap.jp/read0132758/
https://link.springer.com/book/10.1007/978-3-319-61714-5