本研究の目的は,思想の大衆化の過程,つまり思想家の言説が人びとに普及し受容される際の歴史的経過を解明することであった。より詳しくは,「新自由主義」の象徴とされてきた思想家の主張と,昨今いわゆる「ネオリベ」として人びとに理解されている思想との間に「ずれ」があるという認識をもとに,それが生じた歴史的背景を描き出すことである。 この課題に取り組むため,二十世紀に活躍した経済学者であるフリードリッヒ・ハイエクの思想を参照点に,1.人物,2.組織,3.地域という三つの観点から,順にこの問題を考察し,新自由主義の普及過程について,多角的な視野から検討した。
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