研究課題/領域番号 |
15H05391
|
研究機関 | 流通経済大学 |
研究代表者 |
森 悠子 流通経済大学, 経済学部, 講師 (10748198)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 議席割当制度 / マッチング推計 / インド |
研究実績の概要 |
平成27年度は、主にインドの被差別集団に対する議席割当制度が政治競争および投票行動に及ぼす効果の検証という研究課題について取り組んだ。インドでは積極的差別是正措置として議席割当制度が採択されている。議席割当制度とは、国・地方議会における議席数の一定割合を、女性や特定カースト等の被差別集団に割り当てる制度である。議席割当制度には被差別集団に対する再分配支出の増加が期待される一方で、議席割当を受ける被差別集団と多数派集団の対立が深まることが懸念されている。また、議席割当制度で政策決定の場に参加できても、被差別集団が好む政策(貧困対策)へは効果がないことが先行研究から明らかになっている。そこで本研究では、議席割当制度によって被差別集団と多数派集団の投票行動における対立が強まる可能性および議席割当制度が政治競争度に与える効果を検証し、議席割当制度の問題点について分析した。分析の際には、地域特性の違いと議席割当制度の効果を区別するために、マッチング推計の手法を採用した。分析の結果、①議席割当制度は政治競争(得票率の集中度合および立候補者数で代理)を阻害する効果があること、②議席割当制度は投票率を下げる効果があること、③議席割当制度によって、上位カーストを支持基盤とする政党の得票率が増えること、といったことが明らかになった。本研究の結果から、議席割当制度は政治競争を阻害する効果があること、また議席割当制度によって被差別集団が当選しても、被差別集団の候補者は上位カーストを支持基盤とする政党の所属であったり、多数派である中位・上位カーストに迎合する政策を行っている可能性が示唆されている。本研究の成果は現在執筆中であり、平成28年度に一橋大学で開催される国際学会(Human Development and Capability Association)で報告することが決定している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は主に三つの課題について取り組んだ。各々の進捗状況は以下のとおりである。 (1)インドの被差別集団に対する議席割当制度が政治競争および投票行動に及ぼす効果の検証:上述した通り順調に研究成果が出ており、その成果は国際学会で報告する予定である。 (2) インドにおける女性投票率の決定要因および分配面に及ぼす効果の検証:独立から現在までの選挙データおよび国勢調査のデータを用いて、①投票率の上昇がどのような要因によって生じたか、②投票率の上昇が女性に有利な政策の促進につながったか、という2つの課題について検証する。平成27年度は分析に必要なデータの入手および整理を行った。 (3) インドの選挙における情報の提示の仕方と支持候補者の関係:インドにおけるテレビやインターネットを通じた情報の普及と投票行動の関係について分析する。本研究は平成29年度に行われる州議会選挙時に大規模調査を行い、そこで集めたデータを利用して計量分析を行う予定である。平成27年度はそのための準備として、先行研究の整理、情報収集を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
上述した三つの課題についての今後の推進方策は以下の通りである。 (1)インドの被差別集団に対する議席割当制度が政治競争および投票行動に及ぼす効果の検証:国際学会で報告しコメントをもらった上で改訂し、海外の査読付き学術誌に投稿する予定である。 (2)インドにおける女性投票率の決定要因および分配面に及ぼす効果の検証:平成28年度中に論文としてまとめ、国内の学会や研究会で報告する予定である。 (3) インドの選挙における情報の提示の仕方と支持候補者の関係:平成28年度8月にインドに渡航し、調査を依頼するコンサルタント会社を選定する予定である。調査は平成29年度5月または12月を予定している。
|