本研究の目的は、企業間取引の頻度や、取引相手・財・価格・数量の変化を、長期間にわたって広範囲の製造業について観察できる、世界的にも希少な墨米企業間貿易取引データセットを作成し、(課題1)取引相手企業を通じた輸出企業の成長メカニズムと(課題2)取引環境の不確実性が長期的貿易取引関係に与える影響を明らかにすることである。本研究の特色は、取引データを用いるだけではなく、因果関係を明らかにするために、メキシコ=アメリカ貿易に生じた外生的ショックを自然実験として用いることにある。 平成30年度は、本研究で作成した墨米企業間貿易取引データセットを用いて、研究課題を分析するための推定手法の開発と追加的なデータの整備を行った。(課題1)については、平成29年度までに国際学会で報告した、輸出企業と輸入企業のマッチングメカニズムを分析した論文を国際雑誌へ投稿した。(課題2)については、メキシコ麻薬抗争の貿易取引の不確実性を分析するために、個々の取引の輸送経路を推計するために用いる、メキシコ道路網ネットワークデータセットを作成した。それを市町村レベルのメキシコ麻薬抗争データセットを結合し、分析に必要となるデータセットを完成させた。
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