研究実績の概要 |
本研究課題の主な目的は、貿易取引の決済通貨の違いが、為替相場パススルーや貿易額、貿易の輸送頻度等にどういった影響を与えるか、理論的・実証的に明らかにすることである。初年度である2015年度の具体的な研究実績としては、一編の成果論文(Yoshimi, Taiyo. 2016. Welfare implications of currency integration: Labor mobility and pricing-to-market. Global Economic Review, Vol.45, No.1 (February): 78-96.)を査読付き国際誌に掲載されたことが挙げられる。当該論文は、企業が販売先通貨での価格を安定させるという、Pricing-to-market(PTM)の行動をとる時に、通貨統合に関する費用・便益の議論がどのように変更され得るかを理論的に示したものである。当該論文は、為替パススルーと重大な関係を持つ企業のPTM行動に着目をした分析であるという点で、本研究課題と深く関わるものである。また、決済通貨が貿易額、貿易頻度等に与える影響についても、輸出側と輸入側両面から分析を進めており、その成果は、Asia-Pacific Economic Association(APEA)、Association of Southern European Economic Theorists(ASSET)等、複数の国際学会で報告済である。二年度目となる2016年度はこれらの成果についても論文としてとりまとめ、査読付き国際誌への投稿を目指したいと考えている。
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