本研究では幼児期の社会的認知及び関連要因の発達的変化とその個人差を追跡し、自閉症においては生じる臨床的問題との関連も含めて、自閉症の障害発生機序について縦断的かつ実証的に解明することを目的としている。 今年度は、これまでに本研究にご協力下さってきた研究参加者(定型発達児・自閉症児)に対して、社会的認知発達及び関連要因に関する実験課題や発達検査、質問紙調査を実施した。とくに、他者との多様なやり取りの状況において幼児はどのように対応・行動するのかに焦点をあて、複数の観点からデータを収集した。具体的には、①他者が話しているときの態度によって、幼児は、話された情報や他者への信頼性の評価を変えること、②最終的な目的とは因果的には関係のない行為までも幼児は模倣するが、どのような行為でも模倣するわけではなく、最終的な目的につながる行為と共通の特徴をもつ種類の行為が模倣されやすいこと、③向社会的行動の発達を支える能力の一つには他者の誤信念理解があること、④子ども同士のやり取りにおいて、年長になるにつれて根拠を持った説明や提案ができ、双方で合意を得ることができるようになること、などを明らかにした。これらの知見は学会で公表した。 こうした行動やコミュニケーションにも個人差があり、得られたデータにも個人差があることが認められている。こうした行動の個人差について、臨床的問題の発生との関連も含めて、更に検討をすすめていく予定である。
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