研究課題/領域番号 |
15H05399
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研究機関 | 名古屋学芸大学 |
研究代表者 |
今井 正司 名古屋学芸大学, ヒューマンケア学部, 准教授 (50580635)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 注意訓練 / ATT / 前頭前野 / 注意の発達 / ストレス防御 / 疲労 |
研究実績の概要 |
本研究において用いられている介入方法として、Wells A.が開発した注意訓練(ATT)があげられる。ATTは様々な精神疾患や心理的症状に対して著効を示す介入法であることが報告されているが、その作用機序については理論先行的であり、実証的に検討された知見は蓄積されているとは言い難い。また、ATTは治療的観点により効果が検討されているが、予防的観点からは検討が行われていない。本研究では、重度な心理的症状を有する者だけではなく、日常的なストレス症状やそのストレスへの防御的方法として、ATTを適用することの健康学的意義を検討することを目的としている。 本年度において実施した研究の主要な部分としては、(1)注意制御機能の発達とストレス対処/防御の関連性をATTの枠組みで検討したこと、(2)ATTを実施している時の前頭前野機能を測定し、ストレスや心理的症状のタイプとATTにおける作用の関連性について検討したことである。(1)の研究結果の概略としては、小学生、中学生、高校生、大学生を対象にATTの効果を測定する尺度などとともに様々なストレス症状を測定し、注意制御の発達とATTの効果性の関連について検討した。その結果、全ての発達段階において、ATTがストレス対処として効果を有することが確認され、また、発達が進むほどATTにおけるストレス防御性が高くなることが示された。(2)の研究結果の概略としては、ストレス症状別(疲労、不安・抑うつ、怒り、無気力)にATTの作用に関連する前頭前野の機能性を検討した。その結果、疲労ストレスは前頭前野背外側の過活動を沈静化する機能をATTが有していること、無気力ストレスは前頭前野背外側の不活動を活性化する機能を有していることが示唆された。本年度の研究結果は、注意における発達段階とストレス症状類型の影響性が示した新たな知見として予防的観点からも意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はさまざまな4カ年の計画であり、複数の研究パートに分かれており、同時並行的に調査・実験を実施している。本年度は、介入研究の基礎的部分をいくつか実施した。研究進捗は全体的に見ると「おおむね順調」であると判断できる。しかしながら、本研究で対象にしている注意訓練(Attention Training :ATT)を用いた課題などを適用については、先行研究などが少ないことから、改善点などが多数見つかることもあり、その都度解決し再実験・再調査を実施してきたため、研究実施に関する時間を想像以上に要し、解析データも未だ十分とは言い難い状況である。ただ、研究の到達点としては、前倒しで実施している研究パートも進めているため順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、小学生、中学生、高校生、大学生を対象としたアナログ研究として位置付けることができる。調査研究については、全ての学校区分において、十分な研究データを得ることができ、想像以上に調査研究を順調に進めることができた。しかしながら、実験・介入研究においては、小学生などの低年齢層のデータが十分と言えるほどは確保できていない現状である。調査研究の解析とこれまでの実験データの結果から、本研究における「ATTにおけるストレス防御の効果性」は、大学生において効果性をより有していることが明らかになっていることから、引き続き低年齢層のデータを蓄積しながらも、大学生などの高年齢層のデータを充実していくことの重要性を感じている。そのため、次年度の研究においては、現在継続実施しているホームワーク的介入を高年齢層の対象者に多く割り当てることで、本研究の目的となるATTの効果性と機序を適切に検討できるようにする。
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