本研究は、発達段階を考慮したストレス防御について検討することを目的に行われた。具体的には、ストレス防御を促進させる認知機能として「注意制御」と「メタ認知」の機能に焦点をあてて、それらの機能的発達がストレス防御に及ぼす影響について、小学生から大学生の多母集団間において比較検討した。 調査研究においては、臨床心理学的観点から子どもの注意機能とメタ認知的機能を測定することができる「能動的注意尺度児童版(VACS-C)」と「Detached Mindfulness Mode Scale 児童版(DMMS-C)」を作成し、さまざまなストレス(疲労・怒り・うつ・不安)を測定する尺度との関連性を多母集団同時分析によって検討した。その結果、注意制御やメタ認知はストレス指標に対して大きな低減効果を有することが全ての発達段階において示され、発達とともにその効果が顕著であることが明らかとなった(特に、小学生と大学生において効果の差が顕著に示された)。 実験研究においては、Adrian Wellsが開発した「注意訓練」を実施している最中の前頭葉機能をNIRSで測定し、ストレスの度合いと注意制御機能の関連性を各発達段階において比較検討した。それらの実験過程において確立された注意訓練の方法論と評価法を用いて、調査研究において顕著な差が示された小学生と大学生とを比較した結果、ストレス症状の高い者は注意訓練中において前頭前野内側部の賦活性が高く、それは小学生よりも大学生において顕著に示された。しかしながら、ストレス指標が「疲労」である場合は、前頭前野背外側の活性化が過度であること(統制課題や安静期において血流の賦活状態が持続する)が示され、それは大学生よりも小学生において顕著に示された。
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