研究課題
本年度は,昨年度作成したトリビアクイズ課題・マジックショー課題を用いて,機能的磁気共鳴画像法によって,知的好奇心の脳内基盤を調べることが目的であった。この実験では,トリビアクイズやマジックショー課題をスキャナ内で被験者(大学生)に提示し,クイズの答えやマジックのタネをどれくらい知りたいかを,意思決定課題を用いて調べた。この意思決定課題の反応を用いて,知的好奇心に関わる脳内部位を知ることが可能になる。この実験では,こうした知的好奇心を掻き立てる刺激だけでなく,食べ物の写真も提示し,外発的な報酬(動機づけ)に関わる脳部位も調べることで,この両者の脳内表象が重なっているかをしているかを調べることも可能になる。実験の結果,知的好奇心も外発的な報酬(食べ物)も,線条体という脳内の報酬系によって支えられていることが明らかになった。一方,意外なことに,知的好奇心特有,もしくは外発的な報酬に特有の脳部位は,現在までの分析では得られていない。このメインの結果は,現在論文を執筆中である。こうしたメインの脳イメージング実験に加え,いくつかの実験や文献レビューを行い,知的好奇心の心的メカニズムに関して,いくつもの系統的な検討を行った。たとえば,文献レビューの1つでは,知的好奇心が脳内の報酬系を活性化させることで,生活における適応的な自己制御を促進することを明らかにし,研究論文として出版された。また,別の行動実験では,こうした外的報酬と内発的報酬のダイナミクスに関して,人間は不十分な理解しかないため,自己制御的行動に不順が生じる可能性を示唆した。
2: おおむね順調に進展している
当初実施予定であった脳イメージング研究を予定通り実施することができ,分析も順調に進み,論文執筆の段階まで到達している。それに加えて,知的好奇心にかかわる文献レビューや行動実験も行うことができ,進捗は十分であると判断できる。
次年度では,以上の脳イメージング研究の結果をもとに,新たな仮説を生成し,行動実験などでその仮説を検証する予定である。たとえば,知的好奇心が脳内の報酬系に支えられているという結果から,人間は内的な報酬を,外的な報酬なしに自己生成できることが示唆される。この点を調べるための行動実験を計画中である。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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