研究課題
金属や半導体ナノ結晶の集合体は協同的な性質を示し、高度な光学的または電子的な機能を発現することが報告されている。本研究では、ポリオール法を改良して合成した銀ナノワイヤーをモノマーに分散させ、モノマーの光重合によって銀ナノワイヤーを組織化する方法について検討した。具体的に、平均直径と長さがおよそ60nmと4umで、表面にポリビニルピロリドンを吸着させた銀ナノワイヤーを合成した。この銀ナノワイヤーを2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)に分散させ、格子パターンを蒸着したフォトマスクを介して、光照射し、HEMAを重合した。また、フォトマスクの蒸着部のエッジ部分で光は回折するため、フォトマスクと同じパターンの光が試料に照射されるわけでない。このため、感光性の分子を導入したポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)のフィルムを別に調製して光照射し、その時の分子の蛍光減衰量から蛍光と光強度の校正曲線を作製し、試料に照射される実際の光強度分布I(x,y)を求めた。HEMAの重合過程で、銀ナノワイヤーはHEMAの濃度が高い領域(PHEMAの濃度が低い領域)に移動し、集合体を形成した。集合体の幅は、フォトマスクの蒸着パターンの幅よりも小さく、照射時間と共に細線化した。生成した銀ナノワイヤーの集合構造は光強度分布I(x,y)に強く依存することが分かった。その結果、HEMAの重合によってできたPHEMAフィルムのシート抵抗と光透過率にも大きな差違がみられた。光強度分布I(x,y)を調節すると、シート抵抗は最大で5 ohm/sqまで低下し、光透過率はおよそ60%まで向上した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定では、二系分系ポリマーブレンドの相分離を利用して、銀ナノワイヤーを片方の相に濃縮させる計画であったが、フィルムのシート抵抗が思うように低下しなかったため、一成分系に変更したところ、所望の性質が得られるようになった。
銀ナノワイヤーの集合構造は、モノマーの重合速度と銀ナノワイヤーの拡散の競合によって決定されると予想される。今後は、光の特徴を用いて、時間的かつ空間的に光の強度(I(x,y,t))を変化させて、フィルムの性質を向上させる。
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