研究実績の概要 |
平成27年度は、「動く原子層」としてのWS2, MoS2等の遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)原子層の結晶を、化学気相成長法によりグラファイトや窒化ホウ素のへき開面に成長させた。ここで、グラファイトや窒化ホウ素は、原子レベルで平坦かつ清浄な基板として利用している。特に、TMDC原子層の、サイズ、結晶形状、層数の制御を目指した成長条件の検討を行った。具体的には、自作の化学気相成長システムを用い、硫黄ガスと遷移金属酸化物(WO3, MoO3、等)をアルゴンガスで反応部に輸送し、基板上で結晶成長を行う。この時、グラファイトや窒化ホウ素それぞれの基板について、硫黄や金属の供給量や流路の分離、成長温度等についての条件検討を行ってきた。また、ナノマニピュレーションシステムを用いて、原子層のスライドに関する実験を進めた。具体的には、タングステン等の金属の短針をTMDC結晶に接触させ、水平方向に動かすことで異なるTMDC結晶との接触、積層が可能なことを見出してきた。また、結晶に局所的な歪みを導入することにも成功した。歪みについては、ラマンや発光マッピングを利用して確認し、局所的なバンドギャップの制御に適用可能であることを実証した。また、グラファイト基板の外まで結晶を押し出すことで、中空に浮いた状態でWS2原子層を保持することも可能となる。このような浮いた原子層は、基板上と比較し、強い発光スペクトルを示すことなどを確認した。
|