研究実績の概要 |
本研究では、マイクロナノ空間内の分子拡散と電気化学反応の制御により、トランジスタのような働きをする“分子電気化学スイッチ素子”を開発する。これは、一般的なスイッチ素子であるトランジスタとは異なる概念に基づくスイッチ素子である。このスイッチング素子の性能評価とこの素子を組み込んだ電気化学デバイス作製を実施し、バイオアッセイに向けた新規電気化学イメージングを検討する特に細胞活性を可視することで、創薬研究や再生医療への応用を示す。また、CMOS電極アレイデバイスを開発し、電気化学計測との組み合わせによる新しい電気化学イメージングシステムを考案した。これは複数の物質を同時に計測できる優れた計測システムであり、細胞機能計測を含む様々なバイオ計測への応用が期待できる。 該当年度と繰越分の研究では、分子電気化学スイッチ素子を含む電気化学イメージングシステムに関する2報のreviewを報告した(Ino et al., Analyst, 142, 4343-4354, 2017; Ino et al., Curr. Opin. Electrochem., 5, 146-151, 2017)。また、CMOS電極アレイデバイスに関する2報の論文を報告した(Ino et al., Angew. Chem. Int. Ed., 56, 6818-6822, 2017; Kanno et al., Anal. Chem., 89, 12778-12786, 2017)。これにより、複数の対象物質を同時に電気化学イメージングすることが可能にあり、従来法を比べて多くの情報を得られるようになった。開発したシステムを用いて、細胞分化と呼吸活性の同時の電気化学イメージング、ドーパミン放出と呼吸活性の同時の電気化学イメージングを達成した。この他にセンサ電極の修飾法に関する検討を行い、検出システムの汎用性を広げることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な種類の電気化学センサを開発し、それを用いたバイオイメージングに成功した。例えば、呼吸活性や微小生物の動体活性の電気化学的な可視化に成功した。また複数物質の同時の電気化学イメージングシステムを世界で初めて報告しており、そのインパクトは大きい。これまでは単一の対象物しか同時に計測できなったが、本成果により多量の情報を取得できる。本研究成果(Analytical Chemistry, 89, 12778-12786, 2017)を図入りで紹介している2報のreviewが他のグループから報告されており、このことから本成果の注目度の高さが窺える。また、本研究成果を含めた2報のreviewを、代表者が報告しており、電気化学イメージングシステム・デバイスの体系化を推進している。これらのことから、本研究は順調に進んでいるといえる。
|