研究課題
昨年度までに、電界による局所的な磁壁移動の観測、および電界効果を用いた無磁場磁壁導入、に成功している。最終年度である本年度は、100 m/sを超える高速磁壁移動の電界制御に世界で初めて成功した。これまで磁壁移動速度の電界制御は、主に熱活性的なクリープ領域において行われてきた。しかしクリープ速度は10^-3~10^-5 m/s程度と極めて遅く実用的ではない。代表者は磁壁の高速移動領域(フロー領域と呼ばれる)での電界制御を目指して実験セットアップの構築と測定を行った。垂直磁気異方性を有するCo/Pt系材料をキャパシタ構造に加工した試料を用いた。フロー領域の速度は100 m/sを超えるため、一般的な電磁石ではダイナミクスを観測することが極めて困難である。そこで、代表者は0.2 T,150 nsのナノ秒パルス磁界を印加できるシステムを独自に開発した。これにより高速磁壁移動を直接観測することができる。±15 Vの電圧を加えながら磁壁速度を測定した結果、+15 Vを加えている場合に比べ、-15 Vを加えている状態では同じ磁界に対して磁壁がより速く移動していることがわかった。これは世界で初めての成果である。さらに詳細な測定を行った結果、原子レベルに薄い磁石が持つジャロシンスキー・守谷相互作用(DMI)の大きさが電圧により変化していることが、磁壁速度変化の起源であることを突き止めた。DMIの電圧変調により、高速な磁壁移動を制御できることを実証した点も世界初である。上記の結果は、Science Advances誌に掲載された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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