研究課題/領域番号 |
15H05423
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
梶原 優介 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (60512332)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / 近接場顕微鏡 / パッシブ計測 / 極低温 / 走査トンネル顕微鏡 / 表面物性 |
研究実績の概要 |
パッシブ型のTHz近接場顕微鏡(SNOM)とは,常温物質のミクロな熱揺らぎにともなう極微弱なTHz電磁波(波長: 15 μm)を,外部照射光を一切使用せずに20 nmの超高分解能で検出可能な顕微鏡である.本研究の目的は,表面電子系が本質的な役割を果たす物質現象をより深く探るため, THz-SNOMの能力を飛躍的に発展させることにある.具体的には,1) 観察対象を極低温(4.2 K)まで拡張し,2) 8~20 μmの範囲で分光が可能で,かつ3) トンネル電流誘起によるTHz電磁場を検出可能,という新概念の極低温SNOM/STMを構築し,グラフェン等の表面新奇物性を探る. 平成27年度は,極低温SNOM/STMの設計・構築に重点を絞った.特に重要な要求仕様は,1度の液体ヘリウム充填で4.2 K近くまでチャンバ内温度が下がり,かつ半日以上低温を保つこと,光学系,試料走査系の振動を1 nmオーダ以下に抑えること,光学系の焦点と探針先端の位置をマイクロメートルオーダで位置決めするため,外部からチャンバ内を観察可能な光学系を有すること,である.それらの要求をすべて満たした極低温SNOM/STMを設計して必要部品を注文し,年度末に必要部品を全てそろえた.年度末には顕微鏡を構築し,基礎検証としてヘリウム充填時のチャンバ内の温度が効率よく下がるよう,改良を加えつつ充填実験(温度モニタリング)を行っている.現状では10 K近くまで到達するレベルになっているが,目標の4.2 Kまで到達していないため,平成28年度はチャンバ内熱伝導を少し改良して4.2 K到達を達成し,実際の試料測定実験に移る予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の達成のためには,まず低温チャンバおよび走査プローブ顕微鏡(SPM)の設計と構築が最も重要かつ時間のかかる部分であり,その点に年度内で目途が立ったため,進捗としては申し分ない.
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今後の研究の推進方策 |
残り二年の間に,どれだけ早く低温SNOMによる近接場信号取得ができるかどうかが,本研究の推進に当たって大きなポイントとなる.平成28年度は常に数名がとりかかる研究体制で,密なディスカッションおよび時間の有効利用を行いながら年度内での近接場信号取得を目指す.4.2 Kというチャンバ内で探針先端と光学系焦点の位置をマイクロオーダの精度で位置決めできるかどうかが決め手となるが,その点は常温試料における経験を研究代表者が有しており,低温チャンバの扱いに関しても,協力関係にあるユニソク社などの知識・経験を総動員して達成する.
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