本研究では、酸化亜鉛ヘテロ界面の高移動度化を進め、メゾスコピック伝導の手法を用いて偶数分母分数量子ホール状態の解明を行うことを目的としている。酸化亜鉛二次元電子ガスの作製については、基板加熱部品を改良し、100万cm2/Vsを超える移動度をもつ試料を安定的に作製することに成功した。本系のもつ30psという量子散乱時間は、ヒ化ガリウム系二次元電子ガスと同程度に到達していることが明らかになった。既に観測に成功していたν=3/2という新しい偶数分母分数量子ホール状態については、アンチドット構造における整合性抵抗振動の周期から、スピン偏極した複合粒子の形成を示唆する結果が得られた。エアギャップトランジスタや超伝導接合の作製等の周辺基盤技術の確立が進んでおり、偶数分母分数量子ホール状態の更なる解明を進める。
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