研究課題/領域番号 |
15H05428
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
高橋 和 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20512809)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フォトニック結晶 / シリコンラマンレーザ / 高Q値ナノ共振器 |
研究実績の概要 |
申請者は、高Q値シリコンナノ共振器を用いたシリコンラマンレーザーの実用化を目指しており、本研究課題では、シリコンラマンレーザーの①光利得機構の理解を深めることと、②発振特性を明らかにすることを目指している。本年度行った研究成果を以下に箇条書きする。 シリコンラマンレーザーの主要な発振阻害要因である2光子吸収に起因する自由キャリア吸収の影響を、励起光にパルス光を用いて調査した。パルス幅が50ns以下のとき、cw光を励起光としたときよりも発振性能が低下すること、100ns以上のパルス光のときは良化することが分かった。この原因を探るため、TCSPC法を用いた時間分解測定を行った。その結果、ナノ共振器に光が蓄積されるまでに数10nsの時間がかかること、100nsオーダーのキャリア寿命成分が存在することが分かった。 同一構造を有するラマンレーザーサンプルを50個作製して、発振性能に大きくかかわるQ値と周波数差の統計的評価を行った。Q値に関しては全てのサンプルにおいて十分に高い値が得られた。一方で、周波数差のばらつきはレーザの歩留まりに大きく影響することが分かり、次年度以降の改善項目とする。 フォトリソグラフィーによる高Q値ナノ共振器の作製を試みた。その結果、平均Q値で150万というとても高い値が得られた。これにより、ラマンレーザの大量作製は、将来的に可能であることが分かった。プレスリリースを行い、日刊工業新聞、化学工業新聞、Yahooニュースなど10を超えるメディアに掲載された。 サンプル作製に重要となるFE-SEMの5軸ステージを今年度の研究費で購入した。 本研究は、京都大学野田進研究室の協力を得て行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【当初の予想を超える成果】 フォトリソグラフィーを用いて高Q値シリコンナノ共振器を大量作製したことについてプレスリリースを行い、10を超えるメディアに掲載された。応用物理学会での発表が、注目講演に選ばれた。 【計画どおり達成できた研究成果】 ①光利得機構の解明については、時間分解測定により、主要な発振阻害要因である2光子吸収-自由キャリア吸収の影響が評価できた。また、連続発振にいたる時間発展について理解が進んだ。②発振特性評価については、統計的評価により、現状の作製レベルを把握して、今後の改善点をあぶり出すことに成功した。 【計画どおり研究を進められなかった項目】 当初は、光利得スペクトル測定法の開発と温度依存性を評価するための測定系の構築を進める予定であった。これらは、半分程度しか達成できておらず、次年度に遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
光利得スペクトル測定法の開発は、測定原理は分かっており、測定系も立ち上げてあるので、研究時間を確保して研究を進める。 代表者が、ラマンレーザの温度依存性を評価するための測定系の構築を完遂して、レーザ発振の温度特性を調査する。 本年度の成果を受けて、共振器構造を改良して、ラマンレーザの周波数ばらつきの低減を試みる。可能であれば、ラマンレーザをフォトリソグラフィーで作製すること、ラマンレーザの動作波長の短波長化も試みる。
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備考 |
「光ナノ共振器の大量作製に成功」に関する記事が10を超える多数のメディアに掲載された。
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