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2016 年度 実績報告書

ナノ共振器シリコンラマンレーザーの光利得機構の解明と発振特性評価

研究課題

研究課題/領域番号 15H05428
研究機関大阪府立大学

研究代表者

高橋 和  大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20512809)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードシリコンラマンレーザー / フォトニック結晶 / 微小共振器
研究実績の概要

本課題では、高Q値シリコンナノ共振器を用いたシリコンラマンレーザーの①光利得機構の理解、②発振特性の解明を目指している。本年度の研究成果を記す。
【光利得機構の理解】初年度に引き続いて、時間分解測定を行った結果、2光子吸収キャリアが共振波長変化を誘発して、光利得の動的変化を引き起こすことを突き止め、従来考えられてきた自由キャリア吸収だけでなく、共振波長変化も大きな発振阻害要因であることが判明した。つづいて、当初の予定通り、新たな光利得スペクトル測定法の開発と実施を行い、ラマンレーザの利得形状を取得した。考察の結果、強励起下では、2光子吸収だけでは理解できない、レーザ出力低下が起きていることが判明した。
【発振特性の解明】空気孔ばらつきを導入したFDTDシミュレーションを行い、Q値、波長、周波数差、ラマン利得の相関を調べた。初年度に得られた実験結果と比較することで、想定していなかった損失要因が判明した。また、体積を増加したラマンレーザー構造において、初めて発振を確認して、出力向上、周波数ばらつきの影響を低減できることを確認した。これより、今後のレーザー出力向上、歩留まり向上の目途が立った。さらに、1.3 um帯でラマンレーザーを発振させることにも成功した。
【当初の予定を超える成果】産業技術総合研究所と協力して、フォトリソグラフィーで作製したナノ共振器の最高Q値を250万以上に更新するとともに、ラマンレーザー作製に向けた準備を進めた。また、結晶方位が45°回転したSOI基板を開発して、劈開面と同一方向にラマンレーザーを作製することに成功した。さらに、電流励起型ラマンレーザー開発に向けた研究を開始し、ポストプロセス法の開発にも着手した。
ラマンレーザーのポストプロセス開発のために、インクジェット装置を今年度の研究費で購入した。本研究は、京都大学野田進研究室の協力を得て行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

【当初の予想を超える成果】
産業技術総合研究所と協力して、フォトリソグラフィーで作製したナノ共振器の最高Q値を250万以上に更新した。また、ラマンレーザーの結晶方位が、(100)SOI基板の劈開面から45°傾く問題を解決した。さらに、電流励起型ラマンレーザー開発に向けた研究を開始し、ポストプロセス法の開発にも着手した。最後に、ラマンレーザーの産業化に向けて、フォトリソグラフィーで、ラマンレーザーを作製する準備も進めた。
【計画どおり達成できた研究成果】
①光利得機構の解明については、当初計画通りに、発振励起スペクトルと呼ぶべき新たな光利得スペクトル測定手法を開発して、見事、シリコンラマンレーザの利得形状を測定することに成功した。また、時間分解測定を詳細に行った結果、主要な発振阻害要因である2光子吸収-自由キャリア吸収の他に、2光子吸収-共振波長変化が重要であることが判明した。これらの結果は、ラマンレーザーの特性改善や電流励起動作への指針を与えた。②発振特性評価については、ナノ共振器の体積を増加させることで、出力向上と歩留まり向上の効果がダブルで得られることを解明した。動作波長の短波長化も行い、1.3 um帯でラマンレーザーを発振させることに成功した。詳細はこれからの研究次第だが、短波長化した方が、レーザー性能が向上している傾向がある。
【計画どおり研究を進められなかった項目】
ラマンレーザーの温度依存性評価が完遂できていない。当初計画内で、唯一、未達成の項目である。最終年度に遂行する。

今後の研究の推進方策

最終年度は、当初計画において唯一未遂行となっているラマンレーザの温度依存性評価を完遂して、ラマンレーザーが広い温度範囲で発振可能であることを示す。共振器構造改良による性能改善が可能と分かったので、さらに構造を改良して、ラマンレーザの高出力化と歩留り向上の研究を推進する。また、表面プロセス、ポストプロセスを数多く試し、新たな性能改善の可能性を探るとともに、SOI基板依存性もより多くの基板を用いて調べていく。以上のプロセスを経て、性能が改良されたレーザーサンプルに対して、開発した光利得スペクトル手法を適用して、当初目的である①光利得メカニズムの理解と、②発振特性の解明を進めていく。
過去2年の研究で得られた成果、ラマンレーザーの時間分解測定結果、光利得スペクトル測定結果、統計評価、短波長動作、結晶方位を45°回転したSOI基板へのラマンレーザー作製、CMOSプロセスに関する論文を投稿する。また、国際会議発表を増やしていく。
研究開始時には、研究室所属学生が1名のみであったが、現在では9名に増えた。これにより、研究が当初計画以上に進展しはじめた。M2が3名もいるため、ラマンレーザーの産業化に向けた研究を前倒しで進めていく。まず、ラマンレーザーをCMOSプロセスで作製して、レーザー発振を達成する偉業に挑む。本来、企業が行う内容と思われるが、産業技術総合研究所の協力を得て、我々が世界に先がけて行う。つづいて、SLDを光源に用いたラマンレーザー発振に、京都大学野田研究室の協力を得て挑む。自然放出光を励起源としたラマンレーザーは、ラマンレーザーが誕生して半世紀、例がなく、高いインパクトが得られるだろう。以上の研究を持って、産業化に向けたブレークスルーを完了して、電流励起型シリコンラマンレーザー開発挑戦への足がかりとする。

  • 研究成果

    (23件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 6件、 招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Photonic Crystal Nanocavity with a Q-Factor exceeding elevem million2017

    • 著者名/発表者名
      Takashi Asano, Yoshiaki Ochi, Yasushi Takahashi, Katsuhiro Kishimoto, and Susumu Noda
    • 雑誌名

      Optics Express

      巻: 25 ページ: 1769-1777

    • DOI

      10.1364/OE.25.001769

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Analysis of high-Q photonic crystal L3 nanocavities designed by visualization of the leaky components2017

    • 著者名/発表者名
      Kenichi Maeno, Yasushi Takahashi, Tatsuya Nakamura, Takashi Asano, and Susumu Noda
    • 雑誌名

      Optics Express

      巻: 25 ページ: 367-376

    • DOI

      10.1364/OE.25.000367

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Improvement in the quality factors for photonic crystal nanocavities via visualization of the leaky components2016

    • 著者名/発表者名
      Tatsuya Nakamura, Yasushi Takahashi, Yoshinori Tanaka, Takashi Asano, and Susumu Noda
    • 雑誌名

      Optics Express

      巻: 24 ページ: 9541-9549

    • DOI

      10.1364/OE.24.009541

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] フォトニック結晶技術を用いたレーザーの小型化2016

    • 著者名/発表者名
      野田 進、高橋 和、浅野 卓
    • 雑誌名

      レーザー研究

      巻: 8月号 ページ: 514-519

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 高Q値ナノ共振器シリコンラマンレーザー2016

    • 著者名/発表者名
      高橋 和
    • 雑誌名

      光アライアンス

      巻: 8月号 ページ: 52-55

    • 査読あり
  • [学会発表] Temperature Dependence of Q factors of Si Photonic Crystal Slab Nanocavities2017

    • 著者名/発表者名
      T. Asano, K. Tanaka, Y. Takahashi, and S. Noda
    • 学会等名
      Congress of the International Commission for Optics (ICO-24)
    • 発表場所
      Keio Plaza Hotel, Tokyo
    • 年月日
      2017-08-21 – 2017-08-21
    • 国際学会
  • [学会発表] 誘導ラマン効果を用いたサブポアソン光生成の理論検討2017

    • 著者名/発表者名
      乾 善貴、浅野 卓、高橋 和、野田 進
    • 学会等名
      2017年春季応用物理学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2017-03-13 – 2017-03-16
  • [学会発表] フォトリソグラィを用いて300mmSOI基板に作製したシリコン フォトニック結晶ナノ共振器の位置依存性2017

    • 著者名/発表者名
      芦田 紘平,岡野 誠,大塚 実,関 三好,横山 信幸,越野 圭二,山田 浩治,高橋 和
    • 学会等名
      2017年春季応用物理学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2017-03-13 – 2017-03-16
  • [学会発表] Q値100万を超えるシリコン 万を超えるシリコン ナノ共振器への液相ポストプロセ付加2017

    • 著者名/発表者名
      伊藤 隆浩、芦田 紘平、植田 眞由、床波 志保、飯田 琢也、岡野 誠、山田 浩治、高橋 和
    • 学会等名
      2017年春季応用物理学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2017-03-13 – 2017-03-16
  • [学会発表] 発振励起スペクトルによるナノ共振器シリコンラマンレーザの光利得の研究2017

    • 著者名/発表者名
      山下 大喜,高橋 和,浅野 卓,野田 進
    • 学会等名
      2017年春季応用物理学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2017-03-13 – 2017-03-16
  • [学会発表] 結晶方位45度回転SOI 基板を用いたナノ共振器シリコンラマンレーザ2017

    • 著者名/発表者名
      山内 悠起子,高橋 和,浅野 卓,野田 進
    • 学会等名
      2017年春季応用物理学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2017-03-13 – 2017-03-16
  • [学会発表] ナノ共振器シリコンラマレーザの高出力化に向けた検討2017

    • 著者名/発表者名
      栗原 潤、山下 大喜、浅野 卓、高橋 和、野田 進
    • 学会等名
      2017年春季応用物理学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2017-03-13 – 2017-03-16
  • [学会発表] Lasing dynamics of microwatt-threshold Raman silicon lasers using high-Q nanocavities2017

    • 著者名/発表者名
      Daiki Yamashita, Yasushi Takahashi, Takashi Asano, and Susumu Noda
    • 学会等名
      Photonics West 2017
    • 発表場所
      San Francisco, USA
    • 年月日
      2017-02-01 – 2017-02-01
    • 国際学会
  • [学会発表] Photonic crystal nanocavities with Q factor of 2 million fabricated by CMOS compatible process2017

    • 著者名/発表者名
      Kohei Ashida, Makoto Okano, Minoru Ohtsuka, Miyoshi Seki, Nobuyuki Yokoyama, Keiji Koshino, Masahiko Mori, Yasushi Takahashi, Takashi Asano, and Susumu Noda
    • 学会等名
      Photonics West 2017
    • 発表場所
      San Francisco, USA
    • 年月日
      2017-01-30 – 2017-01-30
    • 国際学会
  • [学会発表] 1310/1550nm帯で動作するシリコンラマンレーザーの1チップ集積2017

    • 著者名/発表者名
      桑原 充輝、高橋 和、野田 進
    • 学会等名
      レーザー学会学術講演会第37回年次大会
    • 発表場所
      徳島大学
    • 年月日
      2017-01-07 – 2017-01-07
  • [学会発表] 高Q値フォトニック結晶ナノ共振器を用いた超小型シリコンフォトニクス素子2016

    • 著者名/発表者名
      高橋 和、野田 進
    • 学会等名
      平成28年電気関係学会関西連合大会
    • 発表場所
      大阪府立大学
    • 年月日
      2016-11-23 – 2016-11-23
    • 招待講演
  • [学会発表] Toward the current-injection silicon laser2016

    • 著者名/発表者名
      Yasushi Takahashi
    • 学会等名
      The 10th NanoSquare Workshop
    • 発表場所
      Osaka Prefecture University
    • 年月日
      2016-11-04 – 2016-11-04
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Fluctuations of frequency space and Q factor for nanocavity Raman silicon lasers2016

    • 著者名/発表者名
      J. Kurihara, D.Yamashita,Y. Takahashi, and S. Noda
    • 学会等名
      The 5th KIST-OPU-ECUST-TKU Joint Symposium on Advanced Materials and Application
    • 発表場所
      Korea Institute of Science and Technology (KIST)
    • 年月日
      2016-09-26 – 2016-09-26
    • 国際学会
  • [学会発表] Ultralow threshold Raman silicon lasers using photonic crystal nanocavities2016

    • 著者名/発表者名
      Yasushi Takahashi
    • 学会等名
      The 5th KIST-OPU-ECUST-TKU Joint Symposium on Advanced Materials and Application
    • 発表場所
      Korea Institute of Science and Technology (KIST)
    • 年月日
      2016-09-26 – 2016-09-26
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 1310/1550nm波長帯で動作する高Q値ナノ共振器の1チップ集積2016

    • 著者名/発表者名
      桑原 充輝、高橋 和、野田 進
    • 学会等名
      2016年秋季応用物理学会
    • 発表場所
      朱鷺メッセ(新潟)
    • 年月日
      2016-09-16 – 2016-09-16
  • [学会発表] 熱光子によりポンプされたナノ共振器ラマン系の数値解析2016

    • 著者名/発表者名
      乾 善貴、浅野 卓、高橋 和、野田 進
    • 学会等名
      2016年秋季応用物理学会
    • 発表場所
      朱鷺メッセ(新潟)
    • 年月日
      2016-09-15 – 2016-09-15
  • [学会発表] ナノ共振器シリコンラマンレーザの時間領域測定(Ⅱ)2016

    • 著者名/発表者名
      山下 大喜,高橋 和,浅野 卓,野田 進
    • 学会等名
      2016年秋季応用物理学会
    • 発表場所
      朱鷺メッセ(新潟)
    • 年月日
      2016-09-15 – 2016-09-15
  • [備考] 高橋研ホームページ

    • URL

      http://www2.pe.osakafu-u.ac.jp/pe9/index.html

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公開日: 2018-01-16  

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