研究課題/領域番号 |
15H05432
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
大道 正明 金沢大学, 自然システム学系, 特任助教 (10625453)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 粒子線 / 荷電粒子 / 高分子 / 架橋反応 / 飛跡検出 / クラスターイオン |
研究実績の概要 |
単一の高エネルギー荷電粒子を高分子とN,N’‐メチレンビスアクリルアミドといった架橋剤の混合薄膜に対して照射し、その表面を水蒸気にさらすことで、高分子の架橋反応が起こり、荷電粒子の照射位置が隆起する。本研究課題では、この現象と原子間力顕微鏡を組み合わせることで、数十nm以下の高解像度で照射位置とその荷電粒子の核種を特定できる簡便な飛跡検出技術の開発を目的とする。 平成28年度において、何故膨潤が起こるかといった隆起メカニズムの解明を目的とし、長時間真空乾燥を行い、照射痕の隆起量がどう変化するかを確認した。その結果、1日では大きな変化が見られなかったが、1週間連続で真空乾燥を行うことで、隆起量が半減することを確認した。これは、照射部位に吸水された水分が非常に抜けにくくなっており、照射部位がより親水性に変化していることを示唆している。以上の結果から、これまで不明であった照射痕が膨潤するメカニズムが粒子線の照射部と未照射部の吸水性の差が原因であるということが判明した。 本メカニズムの解明により、水分の吸収量をコントロールするためにこれまでと分子量の異なるポリアクリル酸を利用することで、粒子線に対してより高感度化(隆起量の増大)にも成功した。そのため、これまで難しかった同時に照射したLETの異なる核種(OsとXe)の照射位置をその隆起量の大きさから簡便に判断することが可能になった。これまで難しかった低LETの核種の照射位置の検出に対しての大きな手掛かりになると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度において、申請書に挙げた隆起メカニズムについての核心的な知見が得られ、また異なる核種の照射位置を判断でき、研究課題について一定の成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度においては、今まで不明であった照射痕が隆起するメカニズムが粒子線の照射部と未照射部の吸水性の差が原因であるということが判明した。そのため、平成29年度では、低LETの核種の粒子線を検出できるように照射部と未照射部の差がより大きくなるような高分子と架橋剤の組み合わせを探索する。具体的には、これまで利用してきたポリアクリル酸やポリビニルピロリドンといった親水性高分子だけでなく、より疎水性が高い高分子の組み合わせも検討してみる予定である。
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