研究課題
本研究の目的は外部励起源を用いたX線増幅手法の開発であり、励起源として高強度光学レーザーを固体サンプルに照射した際に生成される高エネルギーの電子(高速電子)を用いている。この高速電子が固体中を伝搬する際に、内殻電離状態が生成される。本研究ではここに、その内殻電離状態から放射されるKα線と同じ光子エネルギーのXFELを照射することで誘導放出を起こし、X線増幅を行った。これまでの実験では2TW級の光学レーザーとXFELを組み合わせた実験を実施し、X線増幅と考えられるスペクトルを得ることができた。その平均増幅倍率はおよそ5倍であり、最も大きな値で12倍ほどであった。SACLAでは、更に出力の大きな光学レーザー(500TWレーザー)の整備が進められており、そのレーザーを用いれば、X線増幅における倍率を更に大きくすることが可能である。今年度から、SACLAにおいて、その500TWレーザーの利用が限定的に始まった。今年度は、そのレーザーを用いたX線増幅を実施するため実験環境整備を実施した。増幅スペクトル計測用のシングルショット・スペクトロメーター、Kα線に加えHeα線などの共鳴線を計測するための広観測領域のスペクトロメーターを500TWレーザーの実験チャンバー向けに整備を実施した。それぞれのスペクトロメーターは良好に動作し、データを取得することができた。更に、これらのスペクトロメーターを用いてX線増幅実験を試みたが、残念ながら増幅と考えられるデータの取得には至らなかった。これは、ショット数が限られていたためであり、これまでの2TW級レーザーで得られたX線増幅データから見積もられる増幅の確率とは矛盾の無い結果であった。今後、これらの計測機器と2TW級レーザー実験で得られた知見をもとに、500TW級レーザーを用いた、より増幅倍率の大きなX線増幅の実現が期待できる。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Applied Sciences
巻: 7 ページ: 584~584
10.3390/app7060584