研究課題
2015年度はSubaru/COMICSを利用した原始惑星系円盤構造の中間赤外線観測の進展、および次世代地上中間赤外線観測の実現に向けた冷却チョッパの実現に向けて、そのアクチュエータ部の試作を行った。まず、Subaru/COMICSを利用したHerbig Ae/Be型星の波長25マイクロメートルでの22天体もの撮像サーベイデータを解析し、これまで提唱してきた group I ソース円盤が遷移円盤であるという仮説のさらなる傍証を得た(Honda et al. 2015, ApJ)。また、さらなる観測を遂行し、注目されている遷移円盤天体であるOph IRS48のSubaru/COMICSを用いたフォローアップ観測を行い、現在解析中である(Okada, Honda, et al. in prep.)。また、冷却チョッパ開発に関しては、低温下(20~30K)での低発熱(<0.1W)を実現するため、MgB2超電導線材を用いた超電導VCMアクチュエータの試作1号機の設計・試作を行った。その結果、超電導のシース材の磁性に起因した磁力が強く、VCMの性能に影響することが分かった(Mouri, Honda, et al. in prep.)。
2: おおむね順調に進展している
既存のすばる望遠鏡を用いた原始惑星系円盤の観測研究に関しては、順調に進展している。具体的には中質量の若い星であるHerbig Ae/Be型星周りの原始惑星系円盤の波長25マイクロメートルでの22天体もの撮像サーベイを行い、これらからの統計的研究から、これまで我々のグループが提唱してきた「group I と呼ばれる種類の天体の円盤が遷移円盤である」という仮説のさらなる傍証を得た(Honda et al. 2015, ApJ)。現在は、この仮説はほぼ受け入れられているといえよう。また、さらなる観測を遂行し、撮像サーベイ天体リストから漏れていた、現在注目されている遷移円盤天体であるOph IRS48のSubaru/COMICSを用いたフォローアップ観測を行い、興味深い観測データを得た。現在、これらのデータを解析中であり、近日中に論文化の予定である(Okada, Honda, et al. in prep.)。冷却チョッパ開発に関しては、今年度はキーとなる、低温(20~30 K)で低発熱(0.1 W <)・高速(1-10 Hz)かつ高ストローク(> 2.5 mm)を実現するアクチュエータの開発を目指した。そのために、MgB2超電導線材に注目し、原理的にジュール発熱がゼロとなる超電導VCMアクチュエータの試作1号機の設計・試作を行った。試作機を常温、低温化で駆動試験を行ったところ、想定した性能からの乖離がみられた。この原因はMgB2そのものではなく、MgB2を収めるシース材となる金属(今回用いた Hypertech 社製の線材の場合はモネルと呼ばれるニッケル合金)の磁性に起因した磁力が強く、VCMの性能に影響することが分かった。
すばる望遠鏡を用いた原始惑星系円盤の観測研究に関しては順調に進捗しており、2016年度には Oph IRS48 の円盤構造、および HD142527円盤構造に関しての観測論文を出版する予定である(Okada, Honda, et al. in prep.)。また、さらに近年著しい成果をあげているALMAを用いた観測との比較研究も進める予定であり、想定以上の成果を期待している。一方で、冷却チョッパ開発に関しては、当初想定していなかったVCMコイルのシース材の磁性の問題が見つかった。これに対処するため、超伝導線材の専門家である東京大学新領域創成科学研究科の大崎教授、およびMgB2コイル製作経験のある物質・材料研究機構の熊倉教授から技術的なコメントをいただいており、今後改良版の2次試作品に取り掛かる予定である。具体的にはシース材に非磁性金属を用いたものを利用する案や、超電導線材ではなく低温下で抵抗値が非常に小さくなる高純度金属線材を用いたコイルを利用することを想定している。これらの2次試作品において、冷却チョッパに必要なアクチュエータプロトタイプの完成を目指す。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件)
The Astrophysical Journal
巻: 821 ページ: 2, 1--6
10.3847/0004-637X/821/1/2
巻: 804 ページ: 143, 1--8
10.1088/0004-637X/804/2/143