研究課題
2016年度はSubaru/COMICSを利用した原始惑星系円盤の中間赤外線形態と、空間分解されていない内側円盤構造を統一的に解釈する構造を見出した。また、次世代地上中間赤外線観測の実現に向けた冷却チョッパの実現に向けて、そのアクチュエータ部の2回目の試作を行った。具体的には、遷移円盤天体であるOph IRS48のSubaru/COMICSを用いた中間赤外線円盤形態が、長軸方向が明るい理由を検討した。その結果、内側円盤の影が外側円盤にかかっていることで、相対的に短軸方向輝度が低下し、長軸方向が明るく見える可能性があることが分かった。(Honda, Okada, et al. in prep.)。また、冷却チョッパ開発に関しては、低温下(20~30K)での低発熱(<0.1W)を実現するため、MgB2超電導線材を用いた超電導VCMアクチュエータの2回目の試作を行い、その性能評価を行った。また比較のため、通常銅線を用いたVCM試作も進めた。その結果、通常銅線でも若干発熱は大きくなるが(~14mWレベル) チョッパ駆動を実現できることが分かった。一方で実験結果を外挿すると,MgB2線材ではさらに1桁発熱を低下させることができるが(~1.4mW),性能を出すには現在入手している線材では臨界電流値を上げる必要があることも明らかとなった。
3: やや遅れている
既存のすばる望遠鏡を用いた原始惑星系円盤の観測研究に関しては、順調に進展している。遷移円盤天体であるOph IRS48のSubaru/COMICSを用いたフォローアップ観測データの解析および議論を行い、内側円盤と外側円盤面の一致/不一致が、中間赤外線熱放射で見られる形態に影響を及ぼすことが分かってきた。IRS48の場合は一致していることで、内側円盤の影が外側円盤の内壁に投影されるため、外側円盤内壁の長軸方向が明るくなる傾向が見られた。現在、これらのデータを論文化し、近日中に投稿予定である(Honda, Okada, et al. in prep.)。冷却チョッパ開発に関しては、低温下(20~30K)での低発熱(<0.1W)を実現するため、MgB2超電導線材を用いた超電導VCMアクチュエータの2回目の試作を行い、その性能評価を行った。昨年度の試作から、MgB2超電導線材はシース材の磁性が問題となることが分かってきたため、発熱は上がるが比較のため非磁性の通常銅線を用いたVCM試作も進めた。その結果、通常銅線でも若干発熱は大きくなるが(~14mWレベル) チョッパ駆動を実現する性能が出せることが分かった。一方で実験結果を外挿すると,MgB2線材ではさらに1桁発熱を低下させることができるが(~1.4mW),性能を出すには現在入手している線材では臨界電流値を上げる必要があることも明らかとなった。
原始惑星系円盤の観測研究に関しては順調に進捗しており、2017年度には Oph IRS48 の円盤構造、および HD142527円盤構造に関しての観測論文を出版する予定である(Honda,Okada, et al. in prep.)。また、さらに近年著しい成果をあげているALMAを用いた観測との比較研究も進める予定であり、想定以上の成果を期待している。一方で、冷却チョッパ開発に関しては、当初想定していなかったVCMコイルのシース材の磁性の問題が見つかった。この問題はそれなりに大きいため、今後は非磁性の銅線を軸としてアクチュエータの開発・最適化を進める。また、既存の装置での実証実験も見据えた、アクチュエータも組み込んだ冷却チョッパシステムの試作も始め、今年度に試作評価を進めたいと考えている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Proceedings of the SPIE (the Society of Photo-Optical Instrumentation Engineers)
巻: 9912 ページ: id. 991218 8 pp
10.1117/12.2231889
The Astrophysical Journal
巻: 821 ページ: id. 2, 6 pp.
10.3847/0004-637X/821/1/2