研究課題/領域番号 |
15H05440
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
冨永 望 甲南大学, 理工学部, 教授 (00550279)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 輻射輸送 / ガンマ線バースト / 元素合成 / 超新星爆発 |
研究実績の概要 |
本研究課題はガンマ線バーストの起源を探るため、多次元多波長相対論的輻射流体計算コードの開発を進めている。平成28年度には以 下のような研究を行った。 1.継続時間の短いガンマ線バーストの起源は中性子星連星の合体と考えられている。中性子星連星は合体の際に重力波を放出し、その電磁波追観測が求められている。そこで、すばる望遠鏡や木曽シュミット望遠鏡を用いて、advanced LIGOによって観測された重力波源の可視光追観測を行った。平成28年度に検出された重力波源はブラックホール連星合体であったため、残念ながら可視光追観測では対応天体は観測されなかったが、多次元多波長相対論的輻射流体計算と比較可能な観測データを取得するための体制を整えることができた。また、同様の体制は高速電波バーストと呼ばれるミリ秒のパルスを放射する電波現象でも活用された。高速電波バーストについても中性子星連星合体を起源とする説もあり、本研究で開発を進めている多次元多波長相対論的輻射流体計算コードと比較可能な天体を増やすことができた。 2.多次元多波長相対論的輻射流体計算をパルサー星雲からの放射へ応用するために雇用している研究員が、パルサー星雲からの電波放射の加速モデルや磁気散逸を含む相対論的磁気流体の減速について研究し、研究会において発表を行った。本研究成果はパルサー星雲への応用のみならず、ガンマ線バーストにおいて磁気散逸が起こる場合の流体の振る舞いに応用可能であり、本研究の目的であるガンマ線バーストの起源の理解に対する一助となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に開発した球面調和関数を用いて光子の散乱を解き離散座標を用いて光子輸送を計算するSpherical Harmonic Discrete Ordinate Method (SHDOM)という手法を採用した多次元多波長相対論的輻射輸送計算コードを、軸対称円柱座標系に拡張し、一般に高エネルギー実験との比較で使用されている電子ガンマ線シャワーソフトウェアと直接比較を行い、さらに相対論的速度を持つ媒質中の非等方・非弾性散乱を含む輻射輸送について、我々の開発した相対論的光子輸送計算コードと一致することを確認した。以上のように、本研究課題の最終目標である多次元多波長相対論的輻射流体・元素合成計算コードに向けて研究は順調に進展している。 さらに、平成28年度には、開発している計算コードと比較可能な観測を取得するための体制およびデータ解析システムの構築を進め、実際に重力波源、高速電波バーストの観測を遂行することができた。これにより、ガンマ線バーストの起源を探るために必要不可欠である観測データの取得に道を開くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
軸対称円柱座標系多次元多波長相対論的輻射輸送計算コードを用いて、相対論的流体計算コードのよって得られた流体構造を背景として輻射輸送計算を行い、光度曲線、スペクトルを提出する。さらに提出した理論モデルを現実のガンマ線バーストに適用し、ガンマ線バーストの観測から求められる流体構造を明らかにする。さらに、相対論的輻射流体計算コードの実現に向けて、多次元多波長相対論的輻射輸送計算コードと相対論的流体計算コードの融合を進める。また、本計算コードの開発と並行して、雇用している研究員とともに、本計算コードのテストとしてレーザー実験の実験結果との比較を行う。さらに、開発している多次元多波長相対論的輻射流体・元素合成計算コードの適用天体を増やし、比較可能な観測データを取得するためのガンマ線バースト・超新星爆発・重力波源・高速電波バーストの追観測体制の構築を推し進める。
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