研究課題
宇宙マイクロ波背景放射のB-mode偏光観測はインフレーション仮説に対し感度を持つ。世界的にその探索へ熾烈な競争があるが、現在の実験感度では強い制限を与えるに至らない。本研究提案では統計、及び系統誤差を同時に低減できる偏光変調器を開発する。特に変調器の広帯域性、そして自身の熱放射を押さえる4 Kでの動作、を同時に達成することで、初期宇宙探索で鍵となる前景放射除去に必須となる広帯域高感度観測が可能となる。これにより代表的な single-field slow-rollインフレー ションモデル(r~0.001)の探索に必要かつ実装可能な偏光計を確立する。現在、この偏光変調器のプロトタイプを作成及び評価を行っている。このプロトタイプは二つに分かれ、回転駆動部と光学素子としての半波長板、である。回転駆動部はφ100MM程度の超伝導軸受け及び保持機構によって構成される。このプロトタイプ回転駆動部はGM冷凍機により4Kに冷却するクライオスタットを持ちいて、5K以下での動作試験を行っている。極低温ステッピングモーターを用いた保持機構の動作、連続回転、エンコーダーを用いた回転位置の決定、回転子の共鳴周波数などの評価を行った。これらの成果はその成果は2本の論文としてまとめた。また、光学素子としての広帯域反射防止膜の研究開発は、φ50mmのサファイア、アルミナサンプルにレーザー微細加工を用いモスアイ加工を行うことで広帯域反射防止膜を作成し、評価結果を論文として投稿し、掲載された。
2: おおむね順調に進展している
以下に27年度の掲げた開発項目及び、それぞれについて現在までの進歩状況を示す。レーザー微細加工による広帯域反射防止膜の開発: ピラミッド形状のモスアイ加工をドイツLaser Zentrum Hannoverにて行った。レーザー加工により現在1:3のアスペクト比を持つピラミッド形状を作ることができ、構築したミリ波透過率測定装置にて60-140GHz程度の周波数領域で透過率特性を評価した。低温モーターの開発: 低温モーターを試験するために、超伝導磁気軸受けを用いた試験システムを構築した。このシステムは5K程度にて冷却環境下で動作する。一方で、低温モーターのプロトタイプを常温かで準備を行っている。この低温モーターは二つに区分され、ドライブ回路とモーターそのものになる。前者はRaspberry Piを用いてサイン波シグナルを作成し、コイルに供給する。後者は磁石とコイルにてACモーターを構成する。コイルのコアには発熱の低減を考慮しmolyperamalloyを用いたもの、またコアレスコイル(アルミを母材とし、スリットを入れることで発熱の低減を行う)を作成した。
以下に28年度に掲げた開発項目及び、それぞれについて今後推進方策を記す。レーザー微細加工による広帯域反射防止膜の開発: ピラミッド形状にてアスペクト比1:3から1:5、そして1:10に向けて加工の最適化を行う。また、加工速度の最適化も行うことにより、大面積(D~400mm)でも加工可能にする。また、光学評価としては現在140GHzまで評価可能な測定系を拡張し、特に高周波数側の測定環境を整える低温モーターの開発: すでに準備中の低温用コイルを用いた試験を前述のGM冷凍機クライオスタットにて行う。また、回転子用の磁石の最適化が重要だということが昨年度判明し、回転子の磁場の非一様性を低減するための磁石設計お同時に行う。また、 ~φ250 mmの大型試験環境及び試作機の設計もφ100mmのプロトタイプでの経験を踏まえて進める。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
Applied Optics
巻: 55 ページ: 3502-3509
10.1364/AO.55.003502
IEEE Transactions on Applied Superconductivity
巻: 印刷中 ページ: 1-4
2016
Journal of Laser Micro/Nanoengineerin
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Journal of Low Temperature Physics
巻: 185 ページ: 1-8
10.1007/s10909-016-1542-8