研究課題
宇宙マイクロ波背景放射の B-mode 偏光観測はインフレーション仮説に対し感度を持つ。世界的にその探索へ熾烈な競争があるが、現在の実験感度では強い制限を与えるに至らない。本研究提案では統計、及び系統誤差を同時に低減できる偏光変調器を開発する。特に変調器の広帯域性、そして自身の熱放射を押さえる4 Kでの動作、を同時に達成することで、初期宇宙探索で鍵となる前景放射除去に必須となる広帯域高感度観測が可能となる。これにより代表的なsingle-field slow-roll インフレー ションモデル(r ~ 0.001)の探索に必要かつ実装可能な偏光計を確立することを目的とした。本計画では連続回転半波長板を用いた低温広帯域偏光変調器の開発要素は、光学的要素である半波長板の広帯域反射防止膜と低温メカトロニクスである超伝導軸受けを用いたモーター部に分類できる。広帯域反射防止膜はレーザー微細加工を用いたモスアイ形状の作成により実現した。すでに開発済みの微小面積での加工性の検証を元に、ナノ秒UVレーザーを用いて反射防止微細構造の形状最適化を行なった。結果として、この形状をミリ波光学的に評価可能な面積にに対して作成した場合、35GHzから265GHzまでの帯域にて90%以上の透過率ができることをシミュレーションにて示した。また、低温駆動機構を構成する軸受け及びモーター部については、実機サイズに准ずる内径400mmの超電導軸受の試作機を作成した。回転子用の磁石の最適化が重要だということが昨年度判明し、回転子の磁場の非一様性を低減するための磁石設計を行なった。設計においては、磁場の非一様性と軸受の保持強度のトレードオフを示し、1%程度の磁場の非一様性は分割型リング磁石でも実現が可能であることを示した。次年度に実機サイズに准ずる試作機(直径400mm程度)を試験するための大型クライオスタットの準備を進めた。
2: おおむね順調に進展している
レーザー微細加工による広帯域反射防止膜の開発: ピラミッド形状にてアスペクト比1:3から1:5、そして1:10に向けて加 工の最適化を行うことを目的としていた。シミュレーションおよびレーザー加工の最適化により35GHzから270GHzを透過率90%以上の形状を導出した。これにより要求する帯域を網羅する加工形状を示すことに成功した。回転子用の磁石の最適化が重要だということが昨年度判明し、回転子の磁場の非一様性を低減するための磁石設計を行なった。設計においては、磁場の非一様性と軸受の保持強度のトレードオフを示し、1%程度の磁場の非一様性は分割型リング磁石でも実現が可能であることを示した。次年度に実機サイズに准ずる試作機(直径400mm程度)を試験するための大型クライオスタットの準備を進めた。
サファイアに対する広帯域(35GHzから270GHz)反射防止機構を実現するために、モスアイ微細加工形状の最適化を十分大きい面積に対して実現し、ミリ波光学測定系により透過率を実測し、当該帯域にて透過率90%以上を実現できることを示す。実機サイズに准ずる試作機(直径400mm程度)を4K環境にて試験を行う。試験項目は熱的特性である。また、モーターコイルの発熱を抑えるために高純度銅線を用いて高いRRRのコイルを作成する。結果として、低温環境にて発熱を抑えた回転機構の実証性を示す。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件)
Physica C: Superconductivity and its Applications
巻: 530 ページ: 138~141
10.1016/j.physc.2016.07.003
Applied Optics
巻: 55 ページ: 3502~3502
https://doi.org/10.1364/AO.55.003502