次世代の宇宙線観測実験を目指した開発研究として、直径1.6 m の複合鏡とその焦点面に4本の20 cmの光電子増倍管を設置した低コスト型の新型大気蛍光望遠鏡による宇宙線観測を実施している。2016年度に1基設置した米国ユタ州のテレスコープアレイ実験の観測サイトに、2017年9月に2基目の新型大気蛍光望遠鏡を設置し、定常観測を開始した。そして、仰角30度×方位角60度を視野角に持つ望遠鏡として、テレスコープアレイ実験の大気蛍光望遠鏡からの外部トリガーと同期したデータ収集を開始している。さらには、天候判断のための全天カメラを設置し、リアルタイムで、全天の雲の存在量を確認できるようになった。この全天カメラの情報を元に、新型大気蛍光望遠鏡を日本からの遠隔観測で運用している。 新型大気蛍光望遠鏡とデータ収集回路の統合試験として、21 km先の紫外線垂直レーザー光を2基の望遠鏡で観測した。望遠鏡を水平方向に動かせる利点を使って、視野内の様々な位置でのレーザーからの信号を観測から望遠鏡の感度特性について検証した。またこのレーザー光は、10の19.5乗電子ボルトの宇宙線が21 km先に到来した時に期待される信号に相当するため、この範囲内に極高エネルギー宇宙線が到来したときに2基の新型大気蛍光望遠鏡で有意な信号が検出できることを確認した。 これまでの観測で、2016年10月から2018年3月までに累計335時間の夜間の観測時間を達成している。テレスコープアレイ大気蛍光望遠鏡と同じ視野を持つため、両望遠鏡の信号の比較から新型大気蛍光望遠鏡が期待通りの性能を持っていることを確かめた。現在は新型大気蛍光望遠鏡の観測運用を継続しつつ、2基の望遠鏡によるデータ解析の準備を進めている。
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