本研究は、独自に開発した超微粒子原子核乾板による方向感度を持った暗黒物質探索実験を推進することを目的として、国際共同研究としてイタリア・グランサッソ研究所にて本格的な実験展開を可能にする技術開発を推進してきた。今年度における重要課題は、地下環境におけるデバイス作成から解析までのシステム構築を進めるとともに、データ解析法の確立とさらなる高度化を行うこと、さらに、本格的な事象解析を進めることで定量的な背景事象数とその原因関する理解を進めることを主要なテーマとした。これらを総合し、下記のような実績を上げることができた。 ①.グランサッソ研究所において、名古屋大学にて製造した超微粒子原子核乾板デバイスのフィルム化と、当研究所HallBに設置したシールドおよび低温チャンバー内の構築とデバイスインストールを行い、最終的に約0.3kg・dのテクニカルランを行った。 ②.事象解析ルーチンの確立を進め、候補事象選別から詳細解析モードへの移行プロセスを構築することができた。また、ナポリ大と共同開発を進めるプラズモン光学応答による超解像解析システムの運用をスタートさせ、事象解析を10nmの分解能で可能となった。 ③.シミュレーション等の研究も進め、現在の主要な背景事象について定量的な理解が進み、本格的なバックグルンドスタディへ移行した。また、その一環で、製造法の改善によるノイズレベルの1/5以上の除去に成功した。 ④.中性子による反跳事象解析も進み、キャリブレーション法の開発が進展した。電子バックグラウンドに関しては、-10℃のデバイス温度での感度の定量的理解を進めることができ、今後より低温での較正システムを構築する。
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