新開発の放射冷却式断熱フィルターRT-MLIを、GroundBIRD望遠鏡に組み込み、望遠鏡の性能向上を行なった。フィルターは、40Kの放射シールドと4Kの放射シールドの窓に導入し、メタルメッシュフィルターを併用することで断熱を実現した。RT-MLIは赤外線をカットする断熱材を多層にして、空間中の熱放射を段階的に減少させることによって断熱を行う。そのため、RT-MLIの横からの迷光があると、断熱性能が下がる。フィルターの縁部分をアルミ板とテープで十分遮光することで、目標温度まで検出器を冷却することに成功した。望遠鏡の窓から300Kの放射熱を導入した状態で、クライオスタットの中に設置している超伝導検出器を、0.20Kまで冷却できた。当初の目標は0.22Kであり、それをさらに20mK低温まで冷却することができた。 検出器の感度は、オランダ宇宙研究所(SRON)からお借りした検出器を用いて評価した。クライオスタットの上部に液体窒素で冷やした黒体を設置して擬似的な77Kの空を作り、その空と窓の間にスタイロフォームを入れることで、検出器に入る強度を調整した。その調整に対する応答の変化から検出器の応答感度を計算し、白色雑音のノイズレベルがどの程度であるかを評価した。その結果、GroundBIRD望遠鏡の目標とする白色雑音レベル2.4 x 10^(-16) [W / sqrt(Hz)]を下回っていることを確認した。SRONの検出器は別の用途用に作成したものを借りているため、望遠鏡の光学フィルターの透過する周波数と一致していない。現在開発中の検出器を乗せることで、さらなる高感度化が期待できる。
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