研究課題
本研究では走査トンネル顕微鏡(STM)を用いてSrTiO3(001)(STO)基板上の単一ユニットセルFeSe(1UC FeSe)薄膜の高い転移温度の起源の解明を目指している。初年度に高品質FeSe薄膜の作成方法を確立したのを受けて、2年目のH28年度は(i)1UC FeSeの超伝導ギャップを走査トンネル分光(STS)により測定する、(ii)STOの表面超構造を制御してFeSe薄膜を作成するの二つを目標に研究を進めた。(i)に関してはSTM装置を5Kに冷却して高分解能STS測定を行うことにより、STO2×1上の1UC FeSeに対して12-15meVの超伝導ギャップの観測に成功した。さらに測定温度を上昇させて超伝導ギャップがいつ閉じるかを検証したが、20K程度でSTM測定が安定して行えなくなり、最低温度以外での測定が難しいことが分かった。さらに表面上で局所的に超伝導ギャップの大きさが異なっていることが分かった。これは不純物などが特に表面上に存在するわけではなく、基板の局所的な電子状態が効いていることが推定される。(ii)に関してはSTO表面をSeの流速下でエッチングした後、710℃で30分加熱すると√2×√2構造が、950℃で30分加熱すると2×1構造が出現することを見出した。特に√2×√2構造はこれまでにほとんど報告例がなく、新しい発見と言える。そしてそれぞれの表面超構造の上に高品質の1UC FeSe薄膜を作成できることを確認した。今後は(ii)で作成した様々な表面超構造上の1UC FeSeに対して超伝導ギャップ測定を行い、1UC FeSeの超伝導特性がSTO表面に依存するのか否かを検証していく。
2: おおむね順調に進展している
目標としている1UC FeSe薄膜の超伝導特性のSTO基板表面超構造への依存性解明に向けた準備が進んでいるのでこのような評価とした。
今後は制御して作成できることが分かった様々な表面超構造上の1UC FeSeに対して超伝導ギャップ測定を行い、1UC FeSeの超伝導特性がSTO表面に依存するのか否かを検証していく。
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Applied Surface Science
巻: 398 ページ: 125~129
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e-Journal of Surface Science and Nanotechnology
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