本研究は、偏光制御された超短光パルスを磁性体に照射することで、逆ファラデー効果、逆コットン・ムートン効果などの逆磁気光学効果によって、より高い自由度で超高速にコヒーレント磁化制御することを目的とする。本年度は、フェムト秒パルスレーザーを用いたポンプ・プローブ磁気光学測定装置を構築した。特に、繰り返し周波数1 kHzのプローブパルス毎の強度揺らぎを高精度で測定し、短周期揺らぎと長周期揺らぎのそれぞれに対する統計処理を行うために、高周波数対応・高分解能を有するデータ収録デバイス(DAQ)を用いた測定システムを構築した。その結果、従来のボックスカー積分器を用いた測定システムと比較して、より高精度なポンプ・プローブ測定装置の開発に成功した。また、光源側と測定側の空気ばね式の除振台を2台ボルト連結することで、建物の揺れが比較的大きい状況であっても、揺れを無視できるような環境を実現した。さらに、レーザー光源の安定性を向上させるために、温度・湿度・ほこり・風の対策を施し、安定性向上を評価した。こうして、今後の研究の展開において非常に重要な測定環境の整備を完了した。 一方、ターゲット試料に関しては、調達、切り出し、整形、基礎物性の評価を終えた。測定が可能な条件出し(光源の波長、偏光、試料の方位)を行っている。来年度以降は、ターゲットとなる試料を用いて、磁化のベクトル制御と磁気相転移の検証に取り組む予定である。
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