研究実績の概要 |
本年度は以下に示す(1)分子骨格の異なる高分子半導体のデバイス作製と物性測定および(2)高分子半導体の構造-物性相関を調べるための周期的境界条件を課した密度汎関数法によるバンド計算に重点的に取り組んだ。 (1)昨年度まで取り組んでいたCDT-BTZ骨格の高分子半導体に加え、シクロペンタジチオフェン-チアジアゾロピリジン骨格を有する高分子半導体PCDT-PTおよびジケトピロロピロール骨格を有する高分子半導体PDPPF-DTT, PDPPT-DTTについて有機電界効果トランジスタを作製し、物性測定を行った。PCDT-PTトランジスタについては、電極層に銀ナノ粒子インク、絶縁層に架橋ポリビニルフェノールを用いることにより、全工程を塗布・印刷法によって作製した。PDPPF-DTTおよびPDPPT-DTTトランジスタについてはシリコンウエハ上に作製した。得られた移動度はそれぞれ0.31, 0.025, 0.10 cm2/Vsであった。 (2)高分子半導体の分子構造と伝導特性の相関を調べるため、4種の高分子半導体P3HT, PBTTT, PCDT-BTZおよびPDPPT-DTTについて周期的境界条件を課した密度汎関数法によるバンド計算を行い、実験結果と比較した。バンド計算によって得られた有効質量はそれぞれ0.27, 0.24, 0.16および0.23(自由電子を基準とした質量比)であり、ホール効果測定においてバンド伝導性が観測されたPCDT-BTZにおいて最も小さいことが分かった。このことは、高分子半導体の分子骨格によって決まる鎖内伝導特性も、ある程度バンド伝導性に寄与している可能性を示唆している。
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