研究課題
本年度の第一の成果として、移動度10 cm2/Vs以上を示す有機トランジスタについて電界誘起電子スピン共鳴測定とホール効果測定を行い、キャリア伝導とスピン緩和の機構を明らかにした。電界誘起電子スピン共鳴測定においては、スピン-格子緩和時間が室温において数十nsであり、その温度依存性は温度のべき乗(-2.85乗)で表されることが分かった。一方、ホール効果測定においては、ホール移動度が室温において16 cm2/Vsであり、その温度依存性もやはり温度のべき乗(-0.85乗)で表されることが分かった。これらの結果から、スピン-格子緩和時間T1と運動量の緩和時間Tpの間にはT1∝Tp/T^2の関係があり、金属などと同様にElliott-Yafet機構でスピンが緩和していると考えられる。(ここで、T^2は温度の2乗を表す。)更に、正孔キャリアがフォノンに散乱された際、Elliott-Yafet機構によってスピンが反転する確率は室温において数百万分の1であると見積もられた。これらの知見は、有機半導体材料の長いスピン寿命を利用した有機スピントロニクス分野において今後重要になると考えられる。第二の成果として、印刷法を用いて有機トランジスタを集積化し、回路応用を行った。具体的にはp型およびn型有機半導体を組み合わせて相補型オペアンプを作製し、様々な信号処理が可能であることを示した。また、乳酸やKイオンなどを検出可能なバイオセンサと組み合わせ、三電極法で計測するためのフィードバック回路と増幅回路を作製した。これらの知見は、有機トランジスタが今後様々なセンサIoT技術に利用可能であることを示している。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 6件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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