研究課題
本研究は、我々のグループが世界で初めて成功した重い電子系超伝導体薄膜の界面設計により、トポロジカル超伝導を含めた新奇超伝導相の創成とその制御を行う。応募者らにノウハウが蓄積された技術を戦略的に展開することで、トポロジカル超伝導の物理を切り拓き、界面設計による新しい超伝導現象探索・超伝導物質開発の学理の基礎を築くことを目的とする。このような目的のもと、平成27年度には(1)重い電子系人工超格子における量子臨界性の解明、(2)重い電子系ハイブリッド超格子における超伝導特性の解明、(3)重い電子系トリコロール超格子における超伝導特性の解明に関する研究を行った。(1)重い電子系反強磁性体と通常金属の超格子を作製することにより、重い電子系反強磁性の2次元閉じ込めに成功し、2次元化による量子臨界状態の実現に成功した。また、磁場に対する量子臨界性の異方性がバルクとは逆になることが明らかとなった。(2)(1)をもとに、重い電子系反強磁性体と超伝導体による重い電子系ハイブリッド超格子を作製した。(1)から期待されるように、量子臨界状態と超伝導が共存することが明らかとなった。このような物質系は実現例がなく、新奇な超伝導状態が示唆される。(3)グローバルな空間反転対称性を破る超伝導物質を超格子作製によって開発することに成功した。従来の化学的物質開発では困難であった、空間反転対称性の破れの人工制御が可能であることを実証した。空間反転対称性に伴うスピンパリティの混成をも人工制御可能であることが示唆される。
2: おおむね順調に進展している
種々の重い電子系人工超格子作製の成功により、従来のバルク物質では実現不可能な物質系の作製が可能となっただけでなく、その超伝導状態がバルク物質とは大きく異なることが明らかとなってきた。したがって、本研究の最低限の到達目標となる界面設計による超伝導物質開発については、大きな進展があったと考えられる。ハイブリッド超格子の作製に成功し、当初予期していなかったような新しい超伝導状態することが明らかとなってきた。そのため、次年度以降にその超伝導状態を明らかにする研究も進める。また、トポロジカル超伝導のエッジ状態を観測するための走査型トンネル顕微鏡システムの準備が完了し、直ちに研究を進める体制が整った。当初の予定通りに次年度からエッジ状態観測のための研究を推進する。
研究はおおむね順調に進展しており、当初の計画通りに研究を推進する方針である。具体的には、重い電子系超伝導薄膜によるトポロジカル超伝導相の実現、トポロジカル超伝導相エッジ状態の走査型トンネル顕微鏡による直接観測、電場による重い電子系超伝導状態の制御、接合におけるトポロジカル超伝導相の探索、である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件) 備考 (3件)
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