研究課題
本年度は、特に反転対称性の破れた半導体であるテルル等を用いてスピン流・電流変換の観測を目指した。当初は、強磁性体との接合系を作成して、磁気共鳴を介して注入されたスピンが電流に変換される過程を観測する手法(スピンポンピング)を試みていたが、この場合には界面における対称性の破れを反映したと思われる選択則のスピン流・電流変換が観測され、バルク物質そのものの対称性を反映した選択則を観測することができなかった。このため、界面を介したスピン注入法ではなく、磁場印加した試料表面に光照射することで、スピン偏極したキャリアを励起し、それらが電流に変換される過程を観測する手法を新たに採用した。この結果、バルク物質の結晶構造・スピン分裂の対称性を正しく反映したと思われる方向に大きな光誘起の起電力が生じることを確認することができた。また、本研究から派生した成果として、反転対称性の破れた結晶構造の強磁性体(絶縁体Cu2OSeO3や金属系のB20合金・Co-Zn-Mn合金)におけるスピン波スピン流が、順方向・逆方向の伝搬に対して異なる伝搬特性を生じる一種の「ダイオード効果」を示すことを発見した。これは、反転対称性の破れに由来して生じるDzyaloshinskii-Moriya相互作用が、非対称なスピン波分散を生み出すことに由来していると考えられる。特定の周波数においては、室温でほぼ100%に近い効率でスピン流の整流ができることもわかっており、結晶構造の対称性を利用した新しいスピン流ダイオードの設計原理を実証することに成功した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Advanced Materials
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1002/adma.201603227
Nature Communications
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10.1038/ncomms12669
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巻: 117 ページ: 047201
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http://www.cems.riken.jp/en/laboratory/esru
http://sekilab.net