研究実績の概要 |
大気海洋結合モデルにおいて熱帯東太平洋海面水温変動を観測履歴に一致させる「ペースメーカー実験」を用い,大気大循環モデル実験と組み合わせ,地球温暖化の十年規模の加減速や経年~十年規模の地域気候変動に対する熱帯太平洋変動の影響メカニズムの解析と観測された時間発展の要因分析を行った. i. 米国地球流体力学研究所気候モデルCM2.1,米国大気研究センター地球システムモデルCESM1, 東京大学大気海洋研/海洋研究開発機構/国立環境研気候モデルMIROC5によるペースメーカー実験の結果を解析し,地球温暖化の十年規模の加減速に対する熱帯太平洋変動の寄与を定量評価した.熱帯太平洋海面水温変動に起因する全球平均地表面気温変動には,経年変動よりも十年規模変動で特にモデル間のばらつきが大きく,これには北半球中高緯度海洋・海氷の感度が重要であるとわかった.結果は現在論文としてとりまとめており,国際誌に投稿予定である. ii. 近年の北半球陸域における夏季極端高温・冬季極端低温の十年規模の増加に対する要因分析を行った.これらの変化傾向は放射強制力と熱帯太平洋変動の影響だけでは説明できず,夏季極端高温に対しては大西洋数十年規模変動,冬季極端低温に対しては北極海氷変動を伴う遠隔影響パターンが寄与することを明らかにした.論文を国際誌に投稿し受理された. iii. CM2.1によるペースメーカー実験及び同モデルの大気部分AM2.1を用いて,①2015-16年の米国西部の渇水の要因分析結果をまとめ国際誌に投稿 (出版済)し,また②インド洋海洋蓄熱量の十年規模変動メカニズムの研究,③南北太平洋十年規模変動のメカニズムと観測された時間発展の要因分析,④夏季熱帯インド洋-北西太平洋大気海洋結合変動メカニズムの研究,⑤熱帯大西洋海面水温変動がもたらす北極海氷変動メカニズムの研究を行った (いずれも国際誌に投稿中).
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