研究実績の概要 |
前年度までの本研究課題において、100万気圧を超える高圧条件下において熱力学的に安定な新含水相FeOOHとAlOOHを発見し、これらの含水鉱物がマントル最深部へ水を供給する可能性を示した。この結果を受け、当該年度では、より大型惑星深部を想定し、より高い圧力における含水鉱物の安定領域の決定と新たな相転移を探索することを目標として研究を進めた。新含水相FeOOHの構造はパイライト型であることを論文として公表したが、新含水鉱物AlOOHについてはその構造を正確に決定することができておらず、さらなる検討を行った。270万気圧におよぶ高圧実験と数値計算による分析により、AlOOHは近年理論計算により予測されたAlOOHの超高圧型単斜晶系相(Verma et al., 2018)であると結論付けた。本鉱物は地球より大きな惑星(例えばスーパーアースや氷惑星)の内部に存在する可能性があるとして、国際雑誌に投稿である。また、下部マントル条件下の含水鉱物はAlOOH、FeOOH、MgSiO4H2の端成分において広い組成範囲で固溶体を形成することを実験により確認し、こちらも国際雑誌に投稿中である。このように、本研究課題で目標とした新規含水相の発見と、多成分系における含水鉱物の組成の理解についての成果が得られてた。本研究の結果を受けた新たな研究が国内外の研究者により行われているが、沈み込んだ水が地球のマントルと中心核の境界でどのような挙動をとるかはいまだ謎が多く、さらなる研究が必要である。
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