研究課題
本課題では、軟X線光源応用を目的としたレーザー生成プラズマ中のイオン価数・電子密度・電子温度の計測システム開発を目指している。計測は、協同的トムソン散乱法によるイオン項スペクトルと電子項スペクトルを、同時に検出することで達成する。ただしイオン項と電子項は、その信号強度・波長幅が大きく異なるため、それぞれに最適化された分光システムを開発する必要がある。イオン項では特に、その狭いスペクトル幅や、スペクトルが計測レーザー波長周辺に存在することから、高い波長分解能と、優れた迷光除去性能を両立したシステムが必要となる。電子項ではトムソン散乱で問題となりやすい迷光問題は深刻ではないが、単位波長あたりの信号強度が微弱であり、計測対象とするプラズマからの制動放射光に容易に覆い隠されてしまう可能性がある。計測システム構築に向けて、迷光やプラズマ発光ノイズの問題が比較的少ない、低イオン価数のレーザーブレイクダウンプラズマを、ヘリウム雰囲気中で生成した。この予備実験により、イオン項と電子項の同時検出、およびそれぞれのスペクトルからイオン価数・電子密度・電子温度を一括して計測できることを確認した。次に、次世代半導体露光光源として利用されているスズプラズマを対象とした実験を行った。スズプラズマはレーザー生成多価電離プラズマであり、軟X線光源応用で用いられるプラズマに近いパラメータを有する。実験では、スズの固体ターゲットを用いたが、ターゲット表面で計測レーザーが乱反射し、迷光となった。迷光対策は、申請者の独自技術である差分散型6回折格子分光器システムで対処した。多価電離プラズマからの強い制動放射光は、プラズマ生成位置(ターゲットと観測レンズの配置)を工夫することや、誘導ブリルアン現象を用いた、計測レーザーの短パルス化、計測時間ゲートの短縮により克服した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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