研究実績の概要 |
グラフェンは炭素原子1個分の厚みを持つ理想的な2次元シートである。応用研究・商品化を視野に入れると必ずしもグラフェンが2次元シートである必要性はない。本研究の目的は、2次元シートであるグラフェンに3次元構造を持たせることで、グラフェンを用いた応用研究・商品化への基礎研究を大きく加速させると共に炭素材料の新たな可能性を探索し実証することである。 3次元構造を持つグラフェンの中で特に重要なのが周期的極小曲面を持つグラフェンである。グラフェンに関して言えば、周期性が整っていることで特異な物性(超伝導や高効率な太陽電池)が現れることが理論的に予測されている。2次元構造しか持たないグラフェンに対して周期的極小曲面を持つグラフェンを作成することは非常に困難とされていたが、最近の申請者の研究によって初めて作成された(Y. Ito et al, Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 4822. (Hot Paper))。しかし、周期的極小曲面を持つグラフェンがどのような物性を持っているかは明らかではなかった。 そこで、周期的極小曲面を持つグラフェンの特異な物性を理解するために、初年度は独自に開発したグラフェン成長法を用いて周期的極小曲面の系サイズを2つのアプローチで作り分けた。一つ目はすでに用意されている多孔質基盤にグラフェンを蒸着させるトップダウン法であり、二つ目はナノ構造体を用いることでその場で多孔質基盤を作成しながらグラフェンを蒸着させるボトムアップ法である。これらの2つの手法を用いることで異なる曲率半径を持ったナノ多孔質グラフェンの制御法の確立に成功した。本研究で開発した手法は世界で初めて多孔質グラフェンの制御に成功した成果であり、多孔質グラフェンのみに適応できるものではなく、様々なナノ多孔質材料にも適応できる重要な材料開発法になった。
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