研究課題
1個の原子の厚さからなる理想的な2次元シートであるグラフェンは様々に優れた特性から応用研究・商品化へに向けて研究が盛んに行われている。本研究の目的は、2次元シートであるグラフェンに2次元グラフェンの特性を維持したまま3次元構造を持たせたグラフェンの基礎研究を理解することで炭素材料の新たな可能性や応用研究を探索し実証することである。3次元構造を持つグラフェンの中で特に重要なのが周期的極小曲面構造の曲率半径である。例えば、周期性があったとしても半径1cmの曲率ではグラフェンは自身が曲がっているということを実効的に感じないが、カーボンナノチューブほどの高い曲率になったときグラフェンは自身が曲がっているということを感じる。したがって、周期的極小曲面を持つグラフェンの特異な物性を理解するために、曲率半径をカーボンナノチューブと同等くらいまで小さくしなければならない。本年度は独自に開発した「ナノ構造体を用いることでその場で多孔質基盤を作成しながらグラフェンを蒸着させるボトムアップ法」に改良を重ねて、最小半径25nmというカーボーンなのチューブに匹敵するほど小さな曲率半径を持った3次元グラフェンの作製に成功した。この極小ともいえる曲率半径25~50nmを持つ3次元グラフェンの物性測定を行ったところ、曲率半径100~300nmと曲率半径500~1000nmの3次元グラフェンとは明らかに異なる物性が出現した。最終年度は曲率半径に依存した特異な物性の解明を目指す。
2: おおむね順調に進展している
異なる周期サイズを持つ周期的極小曲面を持つナノ多孔質グラフェンの制御法をさらに改良し、曲率半径25~50nmを持つ3次元グラフェンの作成法を確立した。さらに、物性測定にも着手でき、基礎物性解明へ順調に進捗している。3次元グラフェンの作成法を確立したことから関連論文も出版することができた。また、「多孔質体およびその製造方法並びに電極」という特許を出願した。さらに、2016年9月に金沢大学で行われた物理学会で招待講演の依頼を受け、国内学会(日本化学会、分子科学討論会)を2件、国際学会(TIMS-CENIDE-NTHU Joint Symposium on Nanoscience and Nanotechnology)を1件、本研究室の成果について口頭発表を行った。
最終年度は、これまでに確立した3次元グラフェンの作製法を用いて曲率半径を制御したナノ多孔質グラフェンの物性測定を行う。具体的には、曲率半径が25~50nm、100~300nm、500~1000nmを有する多孔質グラフェンの物性測定を行う予定である。これらの異なる曲率半径を持ったナノ多孔質グラフェン試料を用いて曲率依存した特異な電子状態密度の変化の解明を目指す。具体的には、光電子分光法や比熱測定を行う予定であり、温度を下げたり磁場を印加することによってフェルミレベル近傍の挙動についてより詳細な議論を行う予定である。さらに異なる曲率半径を持つグラフェンの基礎物性を明らかにして周期構造を持つナノ多孔質グラフェンの基礎的な物性の解明を目指す。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 産業財産権 (1件)
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