研究課題/領域番号 |
15H05475
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
角山 寛規 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (40390661)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノクラスター / 触媒化学 / カップリング反応 / 水素発生 / サイズ効果 |
研究実績の概要 |
金属ナノクラスターは、わずかな原子数の違いによって多様な触媒特性を示すため、触媒材料として有望な物質群である。しかしながら、触媒因子として重要な”サイズ・幾何構造”に加えて、担体との界面の構造の制御が困難であるために、その触媒特性のサイズ特異性の起源の解明は困難であった。本年度は、清浄化したチタン酸ストロンチウム (SrTiO3) 基板上へのパラジウム、白金ナノクラスターの固定化状態の形状観察を行い、固定化方法を確立するとともに、その熱的および電気化学的な触媒活性のサイズ依存性を明らかにした。 数から50量体程度のパラジウムおよび白金ナノクラスターは、30,000個/um2程度の密度以下では、SrTiO3 (100) 基板上において、ナノクラスター同士が会合および融合することなく固定化できていることを原子間力顕微鏡により確認した。一方で、SiO2の熱酸化膜を有するn型シリコン基板上では、ナノクラスターの融合が観測されたことから、ナノクラスターの固定化には、表面の酸素欠陥サイトが重要な役割を持つことが明らかになった。 SrTiO3 (100) 基板上に固定化したパラジウムナノクラスターは、水・アセトニトリル混合溶媒中において、鈴木・宮浦カップリング反応に対する活性を示し、単原子から45量体ナノクラスターの活性の比較から、(1) 原子数の増加に対してナノクラスターあたりの活性が徐々に減少すること、(2) 13量体について特に高い活性を持つことが明らかになった。X線光電子分光による電子状態評価から、ナノクラスターあたりの活性の減少が、ナノクラスターの酸化数の変化に対応することを明らかにした。 他方、白金ナノクラスターは、水の電気分解による水素発生反応において触媒作用を示し、その活性がサイズ特異的であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単一サイズナノクラスター触媒の作製方法を確立し、パラジウムに加えて白金ナノクラスターをサイズ変化することなく基板上に固定化し、触媒活性のサイズ依存性を定量的に評価することを可能にした。その結果、これら2つの系について触媒活性のサイズ特異性を明らかにすることができた。このサイズ特異的な活性の起源について、電子分光を通した電子構造評価から電子構造と活性の相関の評価を進めたが、電子構造因子に加えて、幾何構造因子が重要であることを示す結果が得られつつある。そこで、当初予定していた担持基板とナノクラスターの相互作用の解明に先立って、ナノクラスターの電子および幾何構造を明らかにすることを優先して、研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
パラジウムおよび白金ナノクラスターで観測されたサイズ特異星の起源の解明に向けて、以下の点について研究を進める。 (1) ナノクラスターのサイズ特異性と電子構造の相関解明に向けた、電子構造評価 (2) 原子間力顕微鏡を用いた反応系中でのナノクラスターの安定性の評価 (3) ナノクラスターの固定化サイトの同定と耐久性の向上に向けた基板の改良
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