金属ナノクラスターは、わずかな原子数の違いによって多様な触媒特性を示すため、触媒材料として有望な物質群である。しかしながら、触媒の活性因子として重要な”サイズ”・”幾何構造” に加えて、担体との界面構造の複雑性によって、触媒特性におけるサイズ効果の起源を開映することは、困難であった。本年度は、清浄化したチタン酸ストロンチウム (SrTiO3) 基板上への単一サイズのパラジウムおよび白金ナノクラスターを固定化し、その鈴木ー宮浦カップリング反応および、電気化学的水素発生反応におけるサイズ効果を明らかにするとともに、電子構造の分光学的な評価を加え、サイズ効果の起源を明らかにした。 【白金ナノクラスターによる電気化学水素発生反応 (HER)】 原子から45量体の単一サイズ白金ナノクラスターによる原子あたりのHER活性は、30量体で最大となった。この起源について、白金ナノクラスターの光電子分光および吸着状態の電子構造の考察から、SrTiO3のバンドギャップ間に白金ナノクラスターの最低空軌道がエネルギー的に入ることが重要であることを明らかにした。 【パラジウムナノクラスターによるカップリング反応】 原子から55量体の単一サイズパラジウムナノクラスターによる、鈴木宮浦カップリング反応の活性は、13量体で最大であった。13量体を除いて、原子あたりの活性がサイズ増加に対して単調に減少している点は、ナノクラスターの平均電荷がサイズの増加とともに徐々に中性に近づいていることと対応していた。つまり、酸化的なパラジウム種が活性の増大に寄与していると考えられる。13量体の特異的な活性は、電子状態の点では説明がつかないことから、ある特定サイトの電荷状態に起因すると結論した。
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