• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実績報告書

高反応性アルミニウム化合物による結合活性化を契機とする分子変換反応の開発

研究課題

研究課題/領域番号 15H05477
研究機関京都大学

研究代表者

吾郷 友宏  京都大学, 化学研究所, 助教 (90466798)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードアルミニウム / 有機元素化学 / 有機金属化学 / 小分子活性化 / 不飽和化合物 / 多重結合
研究実績の概要

本年度の研究では、低原子価アルミニウム化合物であるジアルメン(R-Al=Al-R)の等価体としての反応性を示すバレレン型のジアルマンと種々の小分子との反応を検討した。本ジアルマンは窒素や二酸化炭素といったガス分子に対しては反応しなかったが、一酸化炭素とは室温・1気圧の条件で反応が進行したものの、生成物の同定には至らなかった。一方、本ジアルマンはイソシアニドの多量化反応を起こすことを見出し、特にt-ブチルイソシアニドを作用させた際には、定量的にイソシアニドの頭-頭二量体に相当するジアミノアルキン誘導体が得られた。本反応は、ジアルマンのAl-Al部位のパイ結合型LUMOによってイソシアニドが効率的に捕捉・求電子的に活性化され、引き続いてAl-Al部位のシグマ結合電子対がイソシアニドを攻撃し還元的に多量化したものと考えられる。
また、高い電子求引性を有する含アルミニウム環状共役化合物であるアルモールを用いた小分子活性化を検討したところ、アルケン、アルキンに加えニトリルなどのヘテロ二重結合化合物と穏和な条件で環化付加が進行し、アルミニウムを含む共役中員環化合物が生成することを見出した。本反応で得られる含アルミニウム中員環は、アルミニウム部位での引き続く結合変換によって様々な環状共役骨格への誘導が可能である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度の研究では、バレレン型ジアルマンと小分子との反応性の解明と、複数の基質分子の連続的活性化による分子変換反応の検討を予定していた。バレレン型ジアルマンと小分子との反応性については、研究実績概要に記したとおり種々の小分子との反応を行い、特にイソシアニドの場合にイソシアニドの還元的多量化反応による炭素-炭素結合形成が進行することを見出すことができた。しかしながら、予定していた水素などの気相小分子の活性化反応については十分な検討ができておらず、来年度以降に重点的に検討していく必要がある。また、バレレン型ジアルマンを用いた複数の基質分子の活性化については検討ができていないので、来年度に検討する予定である。一方、含アルミニウム電子不足化合物であるアルモールを用いた不飽和化合物の活性化・炭素ー炭素結合形成反応は当初予期していなかった結果であり、来年度以降はアルモールなどの電子不足アルミニウム化合物による小分子活性化や分子変換反応も併せて検討を行なっていく予定である。

今後の研究の推進方策

本年度の研究で見出したバレレン型ジアルマン化合物による小分子活性化のさらなる展開として、水素などの気相小分子の活性化を検討するとともに、一酸化炭素やイソシアニドとの反応を組み合わせることで多段階の分子変換反応の開発を行う。
さらに、アルモールと不飽和化合物との反応で得られる含アルミニウム環状化合物を活用し、アルミニウム部位での求電子剤との反応を検討することで、複雑な骨格を持つ共役化合物合成への展開を行う。また、アルモールなどの電子不足で高いルイス酸性を持つアルミニウム化合物を活用することによる、水素などの小分子活性化についても検討する予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Synthesis and Structure of Lewis-Base-Free Phosphinoalumane Dearivatives2016

    • 著者名/発表者名
      Tomohiro Agou, Shin Ikeda, Takahiro Sasamori, Norihiro Tokitoh
    • 雑誌名

      European Journal of Inorganic Chemistry

      巻: 2016 ページ: 623-627

    • DOI

      10.1001/ejic.201501141

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Formation of a Diaminoalkyne Derivative by Dialumane-mediated Homocoupling of t-Butyl Isocyanide2015

    • 著者名/発表者名
      Koichi Nagata, Tomohiro Agou, Takahiro Sasamori, Norihiro Tokitoh
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 44 ページ: 1610-1612

    • DOI

      10.1246/cl.150688

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Ring Expansion to 1-Bromo-1-alumacyclonona-2,4,6,8-tetraene by Insertion of Two Alkyne Molecules into the Al-C Bonds2015

    • 著者名/発表者名
      Tomohiro Agou, Tatsuya Wasano, Takahiro Sasamori, Jing-Dong Guo, Shigeru Nagase, Norihiro Tokitoh
    • 雑誌名

      Angewandte Chemie International Edition

      巻: 54 ページ: 9568-9571

    • DOI

      10.1002/anie.201504468

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] ジアルメン等価体としての性質を持つバレレン型ジアルマンによる水素分子の活性化反応2016

    • 著者名/発表者名
      長田浩一、吾郷友宏、笹森貴裕、グオジンドン、永瀬茂、時任宣博
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス
    • 年月日
      2016-03-24 – 2016-03-27
  • [学会発表] かさ高い置換基を有するハロアルマニル鉄錯体の合成と構造2016

    • 著者名/発表者名
      柳澤達也、吾郷友宏、笹森貴裕、時任宣博
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス
    • 年月日
      2016-03-24 – 2016-03-27
  • [学会発表] 1-ハロアルモールの合成と反応性2015

    • 著者名/発表者名
      吾郷友宏、和佐野達也、笹森貴裕、グオジンドン、永瀬茂、時任宣博
    • 学会等名
      第26回基礎有機化学討論会
    • 発表場所
      愛媛大学、松山大学
    • 年月日
      2015-09-24 – 2015-09-26
  • [学会発表] バレレン型ジアルマンとイソシアニドとの反応2015

    • 著者名/発表者名
      長田浩一、吾郷友宏、笹森貴裕、時任宣博
    • 学会等名
      第62回有機金属化学討論会
    • 発表場所
      関西大学千里山キャンパス
    • 年月日
      2015-09-07 – 2015-09-09
  • [学会発表] Reactions of a Barrelene-type Dialumane Bearing Bulky Aryl Substituents with Lewis Bases2015

    • 著者名/発表者名
      長田浩一、吾郷友宏、笹森貴裕、時任宣博
    • 学会等名
      The 14th International Symposium on Inorganic Ring Systems
    • 発表場所
      ドイツ、レーゲンスブルク
    • 年月日
      2015-07-26 – 2015-07-31
    • 国際学会
  • [学会発表] Synthesis and Properties of Stable Alumoles2015

    • 著者名/発表者名
      時任宣博、和佐野達也、吾郷友宏、笹森貴裕
    • 学会等名
      The 14th International Symposium on Inorganic Ring Systems
    • 発表場所
      ドイツ、レーゲンスブルク
    • 年月日
      2015-07-26 – 2015-07-31
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Reactivities of a Barrelene-type Dialumane as an Equivalent of an Al=Al Doubly-bonded Species2015

    • 著者名/発表者名
      吾郷友宏、長田浩一、笹森貴裕、時任宣博
    • 学会等名
      The 14th International Symposium on Inorganic Ring Systems
    • 発表場所
      ドイツ、レーゲンスブルク
    • 年月日
      2015-07-26 – 2015-07-31
    • 国際学会
  • [学会発表] Synthesis and Properties of a Dialumane Featuring a Barrelene-type Scaffold2015

    • 著者名/発表者名
      時任宣博、長田浩一、吾郷友宏、笹森貴裕
    • 学会等名
      The 11th International Conference on Heteroatom Chemistry
    • 発表場所
      フランス、カン
    • 年月日
      2015-07-14 – 2015-07-19
    • 国際学会 / 招待講演

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi