研究課題
本研究計画では低原子価状態の有機アルミニウム化合物を活性種とした、小分子活性化反応の開発と、触媒的な分子変換反応への展開を検討している。平成28年度の研究では、前年度の検討で見出していた、アルミニウム二重結合化学種(ジアルメン)による水素分子活性化反応について詳細に検討を行った。理論化学計算の結果から、本反応は、ジアルメンのAl=Al結合の反結合性軌道に対し水素分子のH-Hシグマ結合が配位することでH-H結合が活性化され、生じたヒドリドイオンがアルミニウム上に移動することで進行することを見出した。水素分子活性化で得られた水素化アルミニウム化合物の還元剤としての利用を検討したところ、ベンゾフェノンなどのカルボニル化合物に対して高い反応性を持つことを見出した。また、この反応で生じたアルミニウムアルコキシドに対し、水素化ホウ素化合物を作用させると、アルコキシボランの発生が見られたことから、水素化アルミニウム化合物が再生することが示唆された。以上の結果より、ジアルメンが水素分子活性化に対し高い反応性を持つことと、得られた水素化アルミニウム化合物が水素化反応を触媒する可能性を持つことがわかった。平成28年度からは現所属の茨城大学に異動となり研究環境が大きく変わったため、これまでの研究に加えて空気や水に対し安定性の高いアルミニウム錯体を用いた分子活性化についても検討を行った。電子不足なポルフィリン配位子を持つアルミニウム錯体をルイス酸触媒とした反応開発についていくつか検討を行った。現在のところ触媒反応を達成するには至っていないが、反応検討の中で新規なカチオン性アルミニウムポルフィリンの発生に成功した。現在、本カチオン性錯体の単離構造決定と、その触媒への利用について検討を継続中である。
4: 遅れている
平成28年度から現所属の茨城大学に異動となっており、研究環境の立ち上げに非常に時間を要した。特に、本研究で必須である高反応性化学種を取り扱うための設備が無い環境であったため、特殊ガラス器具を始めとする実験設備の導入が必要であった。平成28年度で必要な実験環境の整備が完了したので、平成29年度から本格的に研究に着手が可能となっている。
平成28年度の研究で新規なアルミニウムポルフィリン錯体の開発に成功しており、本錯体をルイス酸触媒とした分子変換を検討する。特に、アルミニウムとフッ素の高い親和性を活かして、安定結合の一つであるC-F結合の活性化による分子変換反応の開発と、その触媒化を行う。なお、上述のとおり現所属である茨城大学では、グローブボックスを始めとする高反応性化学種の取り扱い可能な環境が不足しているため、空気や水に対し安定なアルミニウム化合物を用いた研究を主に推進する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) 備考 (3件)
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