研究課題
カーボンナノチューブの発見以来、多孔性材料としてのナノチューブはその内空間における分子吸着能だけではなく、導電性や高い耐久性から、エレクトロニクスなどの将来的な機能性材料への応用が期待されている物質群である。本研究では、金属錯体を使用した簡便なボトムアップ合成により生成する、多孔性金属錯体ナノチューブを基盤材料として選択し、従来のカーボンナノチューブ、無機ナノチューブに代わる第三のナノチューブ材料としての可能性を探るべく、ボトムアップ合成による構造設計に基づく金属錯体ナノチューブの系統的な空間設計と物性制御を第一に掲げ、金属錯体ナノチューブが有する内空間に基づく超プロトン伝導性、金属(超)伝導性の発現、およびそれらが共存する系や、太陽電池を志向した機能性材料の開発を目指している。初年度となる平成27年度は、種々のサイズの環状金属錯体を基盤とした金属錯体ナノチューブの系統的な構造制御に注力し、開口径を0.2~2 nmの範囲で連続的に変化させた、一連のナノチューブ群の構築に成功し、その結晶構造をX線結晶構造解析により明らかにした。さらに、これらのナノチューブの内部に開口径に依存したサイズの水分子クラスターが形成され、他の多孔性金属錯体材料と比較して高いプロトン伝導性を示すことを見出した。
1: 当初の計画以上に進展している
初年度である平成27年度に目標とした、環状金属錯体のサイズに着目したナノチューブの系統的な構造制御に成功し、また、ナノチューブの開口径に依存した空間内の水分子クラスター形成と高プロトン伝導性を明らかに出来たため。
二年度となる平成28年度以降は、原料となる環状金属錯体の有機配位子の官能基修飾によるナノチューブの内空間の疎水性/親水性の制御や、電子ドナー/アクセプター性のゲスト分子導入等による金属錯体ナノチューブの物性制御に取り組んでいく。特に、内空間の修飾による超プロトン伝導性や金属伝導性の発現が主要な目標である。加えて、高圧力や極低温下の物性測定を駆使した物性探索も行う予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 1件、 査読あり 11件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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