研究課題
アミノグリコシド系抗生剤は、リボソームに結合して翻訳の正確性を低下させ、mRNAのコドン情報と異なるアミノ酸を取り込ませることで抗生作用を示す。本研究ではこの作用を遺伝情報の変換と捉え、リボソーム結合性分子を用いた新規遺伝子治療法の開発を目指している。アミノグリコシドの作用は特定のコドンに対して特異的に起こるのではないため、ランダムに変異の入ったタンパク質が合成される。従って、効果の強いAGほど細胞毒性も強い。また、十分な効果を得るためには高い投与量が必要で、これが副作用(腎毒性、耳毒性)の原因となっている。このような背景から、本年度はアミノグリコシドに代わる新規リボソーム結合性分子の探索を行った。リボソーム結合性分子の探索に向け、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いた競合アッセイによるハイスループットスクリーニングを実施した。アミノグリコシドの一つであるパロモマイシンを固定化したSPRセンサーに対し、アミノグリコシド結合配列を持つモデルRNAをインジェクトすると、結合によるレスポンスの上昇が見られる。ここにリボソーム結合性分子が共存させると結合の競合によりレスポンスが減少する。この手法を用いて2000化合物のリボソーム結合性を評価したところ、5個のヒット化合物が得られた。このうち一つは、真核生物のリボソームには結合せず、原核生物のリボソームに対して選択的に結合した。さらにこの化合物は大腸菌リボソームの翻訳阻害活性を示したことから、新規抗生物質としての応用が期待される。
2: おおむね順調に進展している
本研究の全体構想において鍵となる新規分子の取得に成功した。
新規リボソーム結合性分子の探索を推進するとともに、得られた分子を用いた塩基配列選択的な遺伝情報変換の実現を目指す。
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Science
巻: 349 ページ: 864-868
10.1126/science.aab3831