研究課題
本研究の目的は,ppm以上の極高感度での光電子計測に基づいて,有機半導体物質の電荷輸送現象に関わる伝導準位を完全計測することである。有機デバイスの示す電荷輸送現象の理解と最適化のためには,電荷輸送準位として従来から考慮されてきた単純なHOMO/LUMOのエネルギー準位接続モデルのみでは限界があり,バンド分散,エネルギーギャップ内に潜在する微少準位,さらに伝導電荷や励起子のエネルギー分布に関する実証的な知見が求められている。このため,本研究では,ギャップ内準位やポーラロン・励起子の直接観測を可能とする極高感度光電子計測装置の開発に加えて,有機「真性半導体」としての高純度有機単結晶の電子物性,機能性ヘテロジャンクションをモデル化した分子界面の物性評価,さらに有機無機ペロブスカイト太陽電池材料の電子構造の精密分析まで,多面的な実証研究を展開した。平成29年度の研究実績として,代表的な高移動度p型有機半導体材料であるペンタセン単結晶表面上にn型分子であるC60を積層して形成される高秩序ヘテロエピタキシャル界面の結晶性が成膜温度に依存して変化する挙動を追跡した国際共同研究が挙げられる[原著論文1件]。また,ペンタセン単結晶上に,これをフッ素化して得られるn型材料であるパーフルオロペンタセンも高秩序なエピタキシャル結晶を形成することを明らかにし[原著論文1件],さらにこの分子接合の価電子バンド分散計測にも最近成功するなど(投稿準備中),大きな成果が得られた。一方,本研究において開発してきた精密な電子分析手法を,新しい高性能太陽電池材料として近年注目を集めている有機無機ペロブスカイト材料の電子構造分析に適用する試みにも着手し,多結晶薄膜材料の劣化メカニズム分析[原著論文1件(印刷中)],さらに,単結晶材料の高感度電子分析から微小準位にトラップされた電子の検出を示唆する結果も得られ始めている。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 11件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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