研究課題
マグネシウム金属を用いる二次電池の実現へ向けて、この高いポテンシャルを引き出せる正極材料は存在せず、新規材料の開発が望まれる。本年度は正極材料中の性能支配因子に着目した。イオンの固体内拡散に注目すると、イオンキャリアであるマグネシウムイオンとホスト構造との大きな相互作用を、低減させることが必要である。そこでマグネシウム二次電池正極材料の設計指針を得ることを目的とし、オリビン構造と非晶質のFePO4をホスト構造として、マグネシウムイオン挿入脱離特性の評価と反応機構解析を行った。マグネシウムイオンとリチウムイオンは拡散に有利な構造が異なるため、リチウムイオン二次電池の開発で培われてきた知見だけでは新規正極材料の開発は困難であることが判明した。オリビン型FePO4では拡散速度を高めるため昇温環境で測定を行った。その結果、これまで不明であったマグネシウムイオン挿入後の構造変化を解明した。マグネシウムイオンと鉄イオンのカチオンミキシングが起こり、挿入脱離特性低下につながることが明らかとなった。マグネシウム二次電池正極としての出力特性は低く、固体内のマグネシウムイオン拡散が困難であることが分かった。固体内のイオン拡散を劇的に向上させる手法を会わせて検討し、欠陥導入型のFePO4が優れたマグネシウムイオン挿入脱離速度を示す可能性を見いだした。X線吸収分光法による電子構造解析・局所構造解析において、挿入脱離前後でほぼ可逆的な変化を示したことから、初期の骨格構造を保ったままマグネシウムイオンの挿入脱離反応が進行していることが明らかとなった。本年度の結果は今後の正極材料の開発において有用な設計指針となり、マグネシウム二次電池実現の一役を担うと期待される。
1: 当初の計画以上に進展している
研究開始時点の計画では平成28年度までに、材料設計指針の確立を行い、平成29年度にこれに基づく高性能電池材料の作製を行う予定であった。すでに平成28年度中に材料設計指針の確立を完了し、高性能正極材料の作製と検証を開始している。この材料は優れた特性を示すことを見いだしており、当初の計画以上に進展している。
前年度までに得られた材料設計の指針を活用して、マグネシウム二次電池の作製と検証を行う。特に優れた特性を確認している正極材料を中心にして、材料特性評価(サイクル特性、レート特性、界面反応抵抗、拡散係数)を行う。平行して、材料の性能向上を進める。より具体的には元素置換を積極的に行い、作動電圧の向上、レート特性の向上をはかる。これにより、従来のマグネシウム二次電池ではデメリットであった要因を打ち破ることが可能となり、マグネシウム二次電池の実用化へ向けた基盤を構築することができる。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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