研究課題/領域番号 |
15H05501
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
市川 裕士 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80451540)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 材料設計 / プロセス / 物性 / 評価 / 材料力学 / 溶射 / 接合 / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
1. DIC(デジタル画像相関)技術を活用したひずみ計測技術の確立 マイクロメートルオーダーの超微小領域での応力-ひずみ線図を取得するために,1) FIB微小強度試験の試験片形状の再設計,2) 画像相関法を用いた試験中の形状変化評価法の確立に取り組んだ.最適化した試験片および画像相関法を併用することで試験中の試験片の伸びを定量的に評価することに成功し,応力-ひずみ線図の取得に成功した.本手法をコールドスプレー法で作製された銅積層体に適用し超微小強度試験を行った.本材料は巨視的には塑性変形が困難であることが知られている.また,これまでの研究結果から界面近傍の微小領域においても塑性変形が困難であると考えられていたが,本手法により試験精度を向上させた実験を行った結果,局所的には塑性変形を伴った破断も生じることを発見した. 2. 微小ひずみ制御装置の開発 当初計画ではFIBの既設マニピュレータの制御系を改造することにより試験負荷精度の向上を図る予定であったが,これ以外にピエゾ素子負荷機構を備えた微小ひずみ制御装置も新たに開発した.これにより,FIB微小引張試験機としては従来型のマイクロサンプリングマニピュレータおよびピエゾ素子の2種類の負荷機構の使用が可能になった.これらによって,1) 従来よりも安定したひずみ速度制御による実験が可能となった.2) 試験の半自動化が可能になり試験者の技能差への依存度が減り試験再現性が向上した.3) 従来の単軸引張以外の負荷モードによる実験が可能になった.さらに,前述の最適化試験片およびDIC技術を併用することで微小強度のひずみ速度依存性,位置依存性などについて評価が可能となった.これらの微小ひずみ制御装置は平成28年2月に導入され,本格的な試験は次年度以降行う予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. DIC技術を活用したひずみ計測技術の確立 当初の目標通り,マイクロメートルオーダーの超微小領域での応力-ひずみ線図の取得に成功した.本手法をコールドスプレー法で作製された銅積層体に適用し超微小強度試験を行った結果,巨視的には塑性変形が困難なコールドスプレー材においても,局所的には塑性変形を伴い破断に至ることを明らかにした. 2. 微小ひずみ制御装置の開発 当初計画ではFIBの既設マニピュレータの制御系を改造することにより試験負荷精度の向上を図る予定であったが,これ以外にピエゾ素子負荷機構を備えた微小ひずみ制御装置も新たに開発した.これらの微小ひずみ制御装置により,従来よりも高精度な強度評価が可能となった.これら装置は当初計画通り平成28年2月までに導入が完了し高精度超微小強度試験の準備が整った.
平成27年度は上記の2テーマを中心に当初計画に沿った形で実施し,初期の予定をほぼ達成できたことから,現在までの達成度を(2)と自己評価した.
|
今後の研究の推進方策 |
微小強度評価技術をさらに発展させ,微小領域の材料強度学を体型化,および固相接合現象を理解するために下記の項目について重点的に研究を進めていく. 1. DIC技術を活用したひずみ計測技術の高度化 昨年度までに微小領域での一軸方向の応力-ひずみ線図を取得することに成功している.しかしながら,数マイクロメートル程度の大きさしかない微小試験片であってもその形状変化,すなわちひずみの分布も一様ではないことも明らかとなった.そのため,材料本来の性質を理解するためにはこのひずみ分布を評価する必要がある.昨年度までに確立した手法では試験中の一軸方向のひずみ変化を評価することが可能だが,本年度はDIC技術をさらに応用し,二次元ひずみ分布の変化を評価する技術の確立を目指す. 2. EBSD法を援用した微視組織と強度の関係の体系化 微小試験片を作製する際にSEM-EBSD(電子線後方散乱回折)法を併用することで,微小試験片の結晶構造・方位などの微視組織情報の取得が可能である.特に,前述の二次元ひずみ分布計測技術計測結果と,このEBSDで得られた微視組織情報を同時に用いれば,微視組織と強度の詳細な関係を知ることが可能になる.これらの手法を用いて,固相接合材料の界面での微視組織と強度の関係を体系化を目指す. 本年度も主な試験対象材料としてはコールドスプレー法で施工された銅皮膜を用いる.銅皮膜はヤング率が比較的低くDICでの変形量が大きく得られる利点があるとともに,固相接合の一つであるコールドスプレー法の接合メカニズムの議論で多く用いられた材料である.本材料からまずは評価技術の確立を目指し,さらに他の固相接合材料についても広く評価を行うことで固相接合材料の本質的な接合メカニズムについて検討を進める.
|