研究課題/領域番号 |
15H05502
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山本 剛 東北大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30436159)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 構造制御 / 複合材料 / 分子動力学 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、平成27年度に得られた知見をもとに、「多層CNTは繊維強化プラスチックの強化要素となりうるか?」の命題に対して明確な答えを提示することを目的として、3つの研究課題を引き続き検討を行った。 (課題1)MWCNTの潜在ポテンシャル強度の解明と目指すべきナノ構造の発見:層間架橋結合を有する2層カーボンナノチューブの破壊様式ならびに力学的特性に及ぼす架橋結合密度(総原子数面積当たりの結合数)の影響を分子動力学法により調査した。Frenkel pair型の架橋結合を空間的にランダムに挿入したモデルでは、架橋密度が約3%で剣-鞘型から全層破断型へ破壊様式が変化することがわかった。架橋結合数の増加に伴い、破断ひずみは低下するものの、軸方向のヤング率は向上することがわかった。 (課題2)配向MWCNTの構造制御と破壊特性評価:未処理ならびに熱処理を施した多層カーボンナノチューブの強度・破壊特性評価と構造欠陥の影響を調査した。CVD法で合成したMWCNTには屈曲構造欠陥,不連続構造欠陥および触媒が含まれており、屈曲構造欠陥または不連続構造欠陥において破断を生じることがわかった。また,ワイブル係数は2.7程度であり、大きなばらつきを有していることがわかった。 (課題3)MWCNTRP複合材料の創製と設計指針の構築:未処理ならびに熱処理を施したMWCNTシートを用いた複合材料の作製および機械的特性評価を行った.熱処理を施したMWCNTシートを用いた複合材料の引張強度ならびにヤング率は,未処理のMWCNTシートを用いた複合材料に比べてそれぞれ約1.1倍と約1.7倍に向上した.複合材料の破壊機構について検討したところ,MWCNT-エポキシ界面の剥離に起因した主き裂が発生したことにより複合材料の破壊が生じている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した平成28年度の研究実施計画に対して、研究実績の概要で記載した成果を挙げることができており、概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を遂行する上で特に大きな問題点はない。したがって、平成29年度も研究計画を変更することなく、研究計画調書に記載した3つの研究課題をスケジュールに沿って遂行していく予定である。特に、配向MWCNT強化プラスチック複合材料の作製と次年度購入予定の小型引張試験機を用いた力学的特性評価に関する研究を推進する。
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